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9月中間決算発表シーズンでは逆風が強まるなかでも上方修正する企業が多かった。ここでは10年以上の時を経て、最高益に大復活を遂げる見通しの銘柄群にスポットライトを当てた。
―10年以上ぶりの過去最高益へ上方修正、雌伏期間を経て今飛び立つ銘柄はこれだ―
3月期決算企業の上期決算発表シーズンでは、海外売上高比率の高い企業を中心に上方修正が相次いだ。10月以降に通期の経常利益予想を引き上げた企業は505社に上る。第1四半期(4-6月)決算発表時は世界的なインフレ高進や景気後退への懸念から先行きに慎重な姿勢が目立ったが、急速に進んだ円安や値上げの浸透などによって、利益確保に一定のメドがついたことで上方修正に踏み切る企業が増えた格好だ。今回は足もとの業績が絶好調な上方修正企業のうち、10期以上ぶりに過去最高益を塗り替える見通しになった“大復活”銘柄に注目。長い低迷や雌伏期間を経て、新たな成長ステージを走り出す企業を追った。
●円安効果や経済正常化で7-9月期は6割が増益
22年4-9月期決算を発表した2250社を集計したところ、直近3ヵ月実績である7-9月期の経常利益(米国会計基準と国際会計基準は税引き前利益)の合計額は前年同期と比べ26%増加し、減益だった直前の4-6月期から2ケタ増益に転じた。中国・アリババ<BABA>の株式売却益を計上したソフトバンクグループ <9984> [東証P]が3兆5000億円を超える利益(前年同期は2455億円の赤字)を稼いだ影響が大きく、同社を除くと前年同期とほぼ横ばいになる。ただ、社数ベースでは全体の6割近くが前年比プラスを達成しており、上場企業の業績は堅調に推移していると言える。
業種別にみると、新型コロナウイルス感染拡大による行動制限が緩和されたことで利用客が戻った鉄道や空運の業績回復が顕著だったほか、海運は高水準な運賃の継続、商社大手は資源高を追い風に収益を伸ばした。また、製造業は原材料価格の上昇や長引く半導体不足が重荷となったものの、円安の恩恵を受けて増益を確保した企業が多くみられた。一方、燃料価格の高騰が強烈な向かい風となった電力会社、自然災害や新型コロナ感染の保険金支払いが増えた損害保険大手は赤字決算が目立つ。
ここから紹介する最高益更新の間隔期数が大きい企業は、利益成長が長期停滞を脱した企業といえ、成長路線への回帰が期待される。利益確定売りに押されている銘柄もあるが、押し目買い候補としてマークしたい。以下では、10月1日から11月22日に23年3月期通期の経常利益予想を上方修正した505社の中から、上方修正によって10年以上ぶりに最高益を更新する見通しとなった6銘柄を紹介していく。
●ラウンドワンは高成長モードへ急転換
ラウンドワン <4680> [東証P]は新型コロナ感染拡大による大打撃を受けて、21年3月期に経常損益が198億1100万円の大幅赤字に転落したが、今期はクレーンゲーム専用フロア「ギガクレーンゲームスタジアム」への改装と好調な米国事業が牽引する形で急回復をみせている。4-9月期決算発表時には、通期の経常利益を従来予想の157億8000万円から171億7900万円(前期比3.2倍)へ上方修正し、16期ぶりに最高益を更新する計画を打ち出した。国内事業は光熱費などのコスト増加で利益が計画を下回るものの、アミューズメント機器の積極的な導入や値上げ効果で米国事業が想定以上に伸びる。コロナ禍からの立ち直りが早い米国で積極的な出店を続けており、今期は日米の利益が逆転する見通しだ。今後は米国の好調継続や国内の本格回復による一段の成長が見込まれる。
●トムソンは設備投資ニーズ捉え16期ぶり最高益復活へ
日本トムソン <6480> [東証P]は機械の回転運動を支えるニードルベアリングを国内で初めて自社開発した機械部品メーカー。その高い技術を生かして開発した直線運動の摩擦を低減させる直動案内機器とニードルベアリングを2本柱とし、多品種生産を強みに幅広い分野のニーズを取り込んでいる。4-9月期業績は、設備投資需要が旺盛な半導体製造装置向けを中心に直動案内機器の好調が続いたほか、為替の円安進行も追い風となり、経常利益は60億8400万円(前年同期比2.4倍)と上期ベースの過去最高益を更新した。あわせて、通期の同利益予想を16期ぶり最高益見通しとなる108億円(従来予想は80億円)に上方修正している。指標面では予想PER6倍弱、PBR0.6倍近辺と割安感が強く見直し余地は大きい。
●サンゲツは値上げでコスト高の悪影響をはね返す
サンゲツ <8130> [東証P]はメーカー機能を有するインテリア商社。足もとでは原材料価格や物流コストの高騰が逆風となっているが、積極的な値上げの実施でこれを吸収し、今期は経常利益段階で32期ぶりに過去最高益を塗り替える計画だ。値上げは昨年9月、今年4月、更に10月と1年余りで3回実施。大口取引は数量への影響があるものの、主要とする小口取引では機能・サービス面での強みを発揮する形で着実に浸透している。同社は下期偏重型の収益構造だが、予想値は下期の収益が落ち込む慎重な計画となっており、一段の上振れに含みを持たせている。また、株主還元に積極姿勢をみせる一方、2024年7月に壁紙の新工場を建設する方針を示すなど、成長投資に余念がないことも注目ポイントだ。
●新田ゼラチンは減益予想から一転して11期ぶり最高益へ
新田ゼラチン <4977> [東証P]は国内シェア約6割を誇るゼラチンのトップメーカー。中期経営計画では利益率の高いコラーゲンペプチドや医療用コラーゲン・ゼラチンなど高付加価値分野の強化で更なる成長を目指す方針を掲げる。今期業績は期初段階で経常利益15億円(前期比13.5%減)と減益予想だったが、好調な上期決算を踏まえ29億円に大幅上方修正し、一気に11期ぶりの最高益更新を遂げる見通しとなった。健康促進や予防意識の高まりを背景に北米とインドでカプセル用ゼラチンの引き合いが強く、国内ではグミキャンディーの販売が好調だ。また、円安で為替差益が拡大することも利益を押し上げる。株価は18日に約9年ぶりの高値水準となる1115円をつけた後は調整含みにあるが、予想PER13倍台と割高感はなく押し目買い候補として注視したい。
●片倉コープは期末一括の高配当利回りも妙味
片倉コープアグリ <4031> [東証S]は丸紅系の片倉チッカリンと全農系のコープケミカルが統合して誕生した国内トップクラスの肥料メーカー。足もとの好調な業績を反映する形で、23年3月期通期の経常利益予想を従来の14億円から26億円(前期比2.2倍)へ大幅に引き上げ、14期ぶりに最高益を更新する見通しを示した。原料価格高騰に伴う6月以降の肥料値上げやそれを見越した駆け込み需要を背景に売上高が計画を上回ることに加え、肥料価格の上昇によって在庫評価益も膨らむ。業績上振れに伴い、期末一括の配当計画も前回の50円から89円(前期は57円)に大幅増額修正した。配当利回りは6%近辺と高水準にある一方、予想PER8倍台、PBR0.5倍台と割安感が強く株価の水準訂正余地は大きい。
●JBCCHDは高付加価値化シフトで新成長ステージへ
JBCCホールディングス <9889> [東証P]は事業構造改革が順調に進んでおり、21年1-3月期から四半期ベースでの増益基調が続く。22年4-9月期は戦略的注力分野の成長が継続し、経常利益21億7100万円(前年同期比22.1%増)と上期ベースの過去最高益を記録した。主力のシステム開発で利益率の高い超高速開発案件が大きく伸びたほか、ストック型のクラウドビジネスやセキュリティーサービスも増勢だった。好調な業績を踏まえ、通期の同利益予想を24期ぶりの最高益となる37億円(従来予想は34億円)へ上方修正し、配当も年68円(従来は62円)に引き上げた。配当利回りは3%を大きく上回るうえ、予想PERは12倍弱と同業他社と比べ割高感はなく、株価の上昇余地は十分にあるとみられる。
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