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エンジンオイル交換は頻繁に行なっていても、フロントフォークオイルを「頻繁に交換してます!!」というライダーは数少ない。5000km程度ごとに交換するのが理想だ。カワサキ バリオスのフロントフォークを題材に、フォークオイルの交換はもちろん、各部のシールを交換したので、その手順を紹介する。
正立式フロントフォークのオーバーホール
本企画の前編では、カワサキ バリオスのフロントフォークのオーバーホールで必要となる部品の紹介と、作業前に必要なインナーチューブの曲がりの有無の確認をした。なお、用意したのはカワサキの純正部品ではなく、丸中洋行が製造販売する、JIS規格に準じた純正と同品質/同サイズの“規格部品”だ。
それでは、これら規格部品を使用し、バリオスのフロントフォークのオーバーホール作業を進めてみよう。
写真にはないが、フロントフォークは車体に組み込まれた状態でトップボルトを緩め、抜き取った後は、トップボルトをレンチで固定しながら“インナーチューブを回して”取り外すイメージで作業進行するのが良い。
インナーパーツを抜き取る時には、インナーチューブ内から一気に部品を抜き取らず、オイルが流れ出ないように(周囲を汚さないように)要注意。漏れてしまうフォークオイルをウエスで確実に受けよう。作業場の床をオイルで汚さないように。
廃油受けを準備してフォークオイルを抜き取る。前回のオイル交換後から走行距離が浅かったのか、フォークオイルにクリアさが残っていた。オイルを飛び散らさないよう、廃油受けに紙ウエスを敷いて作業進行。
インナーダンパーの供回りを防ぐために、ダンパーパイプを押さえる専用工具をロングTレンチに差し込みグイッと押し込み、ボトムケース下側から締め付けるロックボルトを緩める。空回りするとボルトが外れないのだ。
特殊工具のダンパーシートパイプホールドツールを利用したことで、ダンパーシートパイプ締め付けボルトを取り外すことができた。このボルト座部分にはガスケットワッシャーが必ず組み込まれるので、ボルト脱着時は要確認。
オイルシールの抜け止めとなっているスナップリングを取り外す。インナーチューブにキズを入れないように小さなマイナスドライバーなどでリングを取り外す。サビているときには新品部品に交換しよう。
フロントフォークのメンテナンス時には大型万力が必要不可欠。万力がない環境での分解作業は間違いなく苦労する。ボトムケースを優しくクランプして、インナーチュープを引っ張り、スコッ、スコッと引き抜く。
インナーチューブを抜き取ったら、内部に差し込み、組み込まれているダンパーシートパイプを抜き取る。このシートパイプが供回りしないようにする専用工具がこれだ。モデルによっては六角溝の回り止め仕様もある。
ボトムケース側のアウターメタルとの摺動部にキズやサビが発生していないか、注意深く点検しよう。摺動部にサビやキズがあると、それが原因でオイルシールリップが切れ、オイル漏れの原因になるのだ。
ダンパーシートパイプエンドに組み込まれる樹脂製ピストンリング周辺をパーツクリーナーで洗浄し、汚れを洗い流そう。明らかに摩耗している場合は、新品部品に交換しよう。パイプサイドの孔がダンパー通路だ。
組み立て復元時には各摺動部にケミカルを塗布しよう。樹脂部品×金属部品の摺動部にはラバーグリスを塗布するのが良い。このピストンリングが摩耗すると、ダンパーの減衰性能を維持できなくなってしまう。
工具を使わずに指先でインナーチューブからスライドメタルを取り外したら、左右2本のインナーチューブを重ねて、ピタッと着くか確認しよう。つまりインナーチューブの曲がり点検だ。メタルの組み込み時は溝を洗浄すること。このメタルはNTB製の規格部品(SB-FF03)だ。
ダンパーシートパイプをインナーチューブ上側から差し込んだら、出っ張った先端にオイルロックピースを差し込む。ボトムケースにインナーチューブを差し込む際には、オイルロックピースが外れないように要注意。
ボトムケースの下側からダンパーシートパイプを締め付け固定するが、ガスケットワッシャーは必ず新品に交換しよう。NTB製のバリオス用のフロントフォークO/Hキット(FKK-02)に同梱セットされている。分解時にボトムケース側に残って貼り付いていることもあるので要注意。締め付けは確実に。
ダンパーパイプのネジ山にボルトが噛んだら、仮締め状態まで締め込む。インナーチューブをフルボトムに押し込んで、インナーチューブを数回転させ、ダンパーパイプとオイルロックピースのセンターリングを行う。
センターリングしたらボトムボルトをしっかり締め付ける。センターリングしないで締め付けるとフルボトム時にインナーチューブとオイルロックピースが噛み込むことがあり、作動性が著しく低下する。ボトムケースの固定は優しく!!
インナーチューブをボトムケースへ組み込んだら、NTB規格部品のアウターメタル(SB-FF01)、オイルシール(O/Hキットに同梱)の順に組み込む。旧車の多くはアウターチューブが直にインナーチューブを受けていたが、摩耗対策でメタルが組み込まれるようになった。
アウターメタルを挿入したら、メタルを押さえるスペーサーワッシャー(O/Hキットに同梱)を組み込む。スペーサーワッシャーがサビで凸凹になっていると周辺パーツに影響が出るので、磨き落とせないサビがあるときは新品に交換しよう。
インナーチューブにオイルシール(O/Hキットに同梱)を組み込む際には、インナーチューブエッジでオイルシールリップを切ってしまうことがある。保護ビニールを被せ、ラバーグリスを塗布して、リップ部分を押し付けるように全体を挿入。
オイルシールの圧入には、ダートフリークの正立フォーク用オイルシールドライバーを利用した。Φ26〜39ミリのインナーチューブに対応した特殊工具だ。ウエイトが揺れて外れにくいようにタイラップで軽く縛って、カツッ、カツッと打ち込んだ。
オイルシールリップにゴミが噛みこまないようにするのが、一番外側に組み込むダストシール(O/Hキットに同梱)だ。CCIのMR20メタルラバーをダストシールリップに吹き付けることで、驚くほどスムーズな作動性を得られる。
フォークオイルには注入量指定と油面の高さ指定がある。サービスマニュアルのデータを参考に、油面の高さを140mmにセットした。ダートフリークの新型油面調整ツール(DRCフォークオイルレベルゲージ) は使いやすい。
オイルを注入したら、インナーチューブを上下に小刻みに作動させてエアー抜きを行い、さらにトップボルト部分を手のひらで閉じてインナーチューブを押し込み、逆に引っ張ってから手のひらを外す。エアー抜き促進を手のひらで行うのが良い。
インナーチューブを押し込んでフルボトムにしよう。ゲージパイプの先端がオイルに沈むことを確認したら(沈まないときはオイルを追加注入する)、風船をつまんで凹のまま差し込み、負圧でオイルを抜いて油面高さを合わせる。
スプリングとスペーサーとカラーパイプを挿入したら、トップボルトを締め付ける。トップボルトをレンチで固定してインナーチューブを回すと締め付けやすい。仮締めしたらインナーチューブを押し込み、作動性を確認しよう。これでフロントフォーク単体のオーバーホール作業は終了だ。
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