ベトナム南部の都市ホーチミン近郊で自動車部品を製造するある日系メーカーの幹部が最近になって体調を崩した。やむを得ず現地の病院に足を運び診断してもらったところ、風邪をこじらせただけで新型コロナウイルスには感染していなかったという。幹部は胸をなで下ろしたが、同時に病院内の光景を直接目にし、衝撃を受けた。
病棟には簡易ベッドがひしめき、多くの人がぐったりとした様子で横たわっている。防護服に身を包んだ医療従事者が懸命に治療活動に当たっていた。灰色の遺体収納袋を載せた簡易ベッドも目につく。遺体の搬送が間に合わず放置せざるを得なくなっているのだ。遺体収納袋に囲まれて治療を受けている患者もいる。この幹部はベトナムにおける新型コロナ感染拡大の深刻さを改めて知ることになった。
もっとも、厳しい状況に直面しているのは病院だけではなかった。この幹部が働く工場も徐々に追い詰められている。規制当局は感染拡大を抑え込むため、7月から製造業に対し従業員の移動を厳しく制限し、彼らが工場の外に出ることを基本的に禁じた。工場側は会議室に寝具や簡易シャワーを持ち込むなどして対応した。だが、地域の感染拡大は止まらない。
そこで当局はさらに厳しい規制を導入し、製造業に対して工場で働く人を増やしてはならないと通達した。泊まり込みで働く従業員の交代が認められなくなってしまったのだ。ただ従業員の中には既に1カ月近く工場に泊まり込んでいる者もいる。疲労の色を濃くする従業員が増え始め、体調を崩す者も出始めた。
半導体不足に東南アジアからの部品調達の停滞が追い打ちとなり、トヨタは9月の世界生産を大幅に減らすことを余儀なくされた。写真はトヨタ元町工場(写真:つのだよしお/アフロ)
この工場が生産する部品の納入先はトヨタ自動車だ。工場幹部らは従業員を叱咤(しった)激励しながら何とか生産を継続してきた。だが上述の幹部は「もうそろそろ限界かもしれない」と不安の声を漏らす。「取引先からは『カネは出すから、何とか生産を続けてくれ』と懇願される。我々への注文を代替できる工場が見つからなくなっているからだ。我々だってそうしたいが、もうだめかもしれない」
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