温暖化を抑えるため、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)といった電動車の普及が加速する中、部品供給を担う 三井ハイテック (北九州市)が存在感を放っている。基盤となる金型づくりの技術力を生かし、電動車の性能を左右するモーターの中核部品「モーターコア」で約4割の世界シェア(市場占有率)を握り、業績は過去最高水準だ。三井康誠社長(53)に強みや戦略を聞いた。(聞き手 経済部長・若松健一)
電動車のグローバル市場は、想定を超える速さ、力強さで成長しています。量的な規模だけではありません。地域的な広がりも勢いを感じます。自動車の電動化は不可逆的に進んでいくでしょう。
モーターコア事業は、国内外で先行投資してきた工場の稼働率が上がり、売り上げ構成比が最も大きな分野に育ちました。当社は半導体の内部配線に使われる部品「リードフレーム」事業も手がけていますが、自動車に用いられる半導体もすごく増えていて、電動車向けがどんどん伸びています。
電動車向けモーターコアの特徴は、厚さ0・25~0・35ミリといった薄い電磁鋼板を使う点にあります。これを金型で打ち抜き、一般的に200枚以上を積み重ねて部品をつくる。鋼板が薄ければ薄いほどエネルギーロスが少なく、効率の良いモーターになるんですね。
ただ、この打ち抜きが難関なんです。材質が硬くてもろく、さらに薄い鋼板を一枚一枚、設計図通りに打ち抜くのは非常に難しい。極めて精度の高い金型が必要で、求められる調整レベルは1000分の1ミリ以下です。長年培った技術によって、こうした精密な金型をつくれることが、大きな強みになっています。
打ち抜いた鋼板は、適正な形状に積み重ねて部品のかたまりをつくり、針のないホチキスのように力で押し込んではめ合わせる。各工程の精度を満たしながら自動で一貫生産し、モーターコア製造のスピードアップにつなげています。電動車向けは直径がおおむね200~300ミリと大きく、精度を保つハードルは高くなりますが、安定した品質の製品を供給しています。
モノづくりで努力を重ね、今までできなかったことができる。それが世の中の役に立つ。そうした達成感を追い求める姿勢が受け継がれています。必要なものがなければ、自分たちでつくろうという「創意工夫」を大切にしている。
要となる金型部門を中心に、独自の技能検定制度も設けています。技能の習得はもとより、技術者の志の高さをはぐくむ意義も大きい。さまざまな工程を担う人たちがみずからの仕事に誇りを持ち、
電動車市場が広がるほどにモーターコアの競争も激しくなるでしょう。それでも
電動車の潮流についていけるよう、日本、中国、北米、欧州の主要4拠点でモーターコアの生産能力を増強し、事業の拡大を図ります。競争力を磨き、勝負すべき市場を選びながら、最大限のシェアを狙っていきます。
本社を置く北九州市は、モノづくりの街として製造業への期待や理解度が高い。けれども、域外へ流出する工学系の学生が多い状況です。我々の生産活動でも重要なプロセスを担い、グローバル展開を支えるのは本社周辺のエンジニアなんですね。会社の成長とともに、世界へ羽ばたこうとする若手人材が、地元で働きがいを持って活躍できる場を提供できるはずですし、そうしたいと考えています。
からの記事と詳細 ( [興論]三井ハイテック 三井康誠社長…電動車向け部品で存在感 - 読売新聞オンライン )
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