自動車向けオイルフィルター用などの金属プレス部品メーカーである三洋電機製作所が、5月30日に民事再生法の適用を申請した。最初の躓きはリーマン・ショックで、生産拠点の海外移転が進んだ影響を受け受注が半減した。2度目の躓きはコロナ禍で、部材調達難や半導体不足、それらに起因する完成車メーカーの生産停滞によって、売上はピーク時の3分の1にまで減少した。これが今回の事態に至った大きな理由であることは間違いないだろう。
ただ、根本的な要因はおそらく違うところにある。コストカット要請による収益性の低下、そこから脱却するための設備投資が資金繰りを圧迫。財務内容を良く見せたいがために不正会計に手を染め、結局中身の改善は進められずに法的手続きを選択せざるを得なくなったということが取材を通して明らかとなった。しかしながらこれは、同社だけが持つ特別な事情によるものだろうか。
債権者説明会で、「どうやって立て直すのか」との質問に対し申立代理人の弁護士は「トータルに儲からない構造があることも理解している」と話している。2次、3次以下のサプライヤーであれば、どこも同様の課題を抱えているのではないかという、一種の問題提起のようにも聞こえるコメントだ。一方、大手サプライヤーも、100年に一度の大変革期を迎えている自動車業界において、技術開発や品質向上はこれまで以上に必要で、各企業とも研究開発(R&D)には莫大な予算を投入し、生き残りに必死だ。変化について来られない下請け企業の面倒を見るにも、限界はある。
これまでも、そしておそらくこれからも日本の基幹産業である自動車産業。仕事や立場によって変化のスピードは一様ではなく、そこから生まれた隙間から零れ落ちてしまう事業者がこれから出てくるかもしれない。同社の事例は、その一つのケーススタディーなのではないだろうか。(帝国データバンク情報部)
日刊工業新聞2022年7月14日
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