2020年12月23日の発売直後から、スポニチアネックス、静岡朝日テレビ「スポーツパラダイス」など各種メディアで紹介され、英語学習者のみならず、サッカーファンにも広がりを見せている『ジュビロ磐田の通訳が教える超実践的英語勉強法』(アルク刊)。
サッカーと英語、一見「遠そう」に見える2つのテーマが融合した本は、どのようにして生まれたのか。また、コロナ禍の中で新しい著者と出会い、信頼関係を構築していった方法とは。担当編集者が、制作のビハインドストーリーをお届けします。
著者/ジョージ赤阪(あかさか)さん
慶應義塾大学理学部卒業後、23歳で初めて海外へ。イギリス・スペイン・ブラジルなどでの語学武者修行中に、サッカーに魅せられる。1999年よりJリーグ・ジュビロ磐田と通訳として契約。現在、英語・スペイン語・ポルトガル語・イタリア語・韓国語の5カ国語で通訳業務を行っている。
Twitter:https://twitter.com/George_Akasaka
担当編集者/美野貴美(みの・たかみ)
株式会社アルク・第3編集部所属。同志社大学法学部政治学科卒業後、出版社で書店営業として勤務。韓国への短期留学を経て、2003年9月より株式会社アルクへ。編集者として携わった本やムックに『通訳というおしごと』(関根マイク著)、『翻訳スキルハンドブック』(駒宮俊友著)、『韓国語ジャーナル2021』などがある。
Twitter:https://twitter.com/tanodano
編集者大ピンチ! 企画立案に煮詰まった!
2020年7月、私は「絶望の底」にいました。1冊1冊の本の出発点となる「企画を立てること」は、編集者にとって重要な仕事の1つですが、私はその企画立案にすっかり煮詰まっていたのです。
「これは行けるんじゃないか」と企画を思いついても、リサーチしてみると、他社からすでに出ているテーマだったり、あるいは単行本の企画として成立させるには少々厳しい内容だったり。「編集者になって17年だけど、いよいよ私、企画を立てられなくなった……?」とかつてないほど焦り、落ち込んでいました。
今までも企画が思い浮かばないことはありました。そんなとき、私はいつも街の書店に足を運びます。
アルクが得意とする語学書の棚をはじめ、児童書から文学、実用書、ビジネス書、マンガの棚に至るまでくまなく歩き回っては、目についた本を手に取りパラパラ。新刊コーナーにも立ち寄り、トレンドのテーマや流行の装丁デザイン、読者の皆さんに今求められているムードはどんなものなのかを、身体全体で感じとる作業を行います。
そして、書店でたくさんの本に触れるうちに「ああ、誰かに必要とされている本が今日も生まれている。私も誰かに受け取ってもらえる本を企画しよう」と少しずつ元気と意欲が湧いてくるのです。
どん底の気分を味わっていたとき、私が足を運んだのはサッカーの棚でした。私はドイツのプロリーグ「ブンデスリーガ」のサッカーをこよなく愛しており、ことにバイエルン・ミュンヘンのゴールキーパー、マヌエル・ノイアーの大ファンなのです。そのときひらめきました。「自分の好きなサッカーと英語を組み合わせた本を作れないかな?」。
サッカーと英語の組み合わせ、どんな企画なら成立する?
サッカーと英語、どんな組み合わせなら興味を持ってもらえるだろう。「海外で活躍している(した)選手×英語」はすでに本がある。サッカー関係で、他に英語を使う人……そうだ、通訳だ! Jリーグの通訳さんの中に、英語学習法について積極的に発言している人はいないだろうか。
そうして出会ったのが、のちに著者としてお願いすることになるジュビロ磐田の通訳、ジョージ赤阪さんでした。
2月下旬に開幕を迎えたものの、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から約4カ月の中断期間を持つことになったJリーグ。
普段とは違う時間の流れの中で、ジョージ赤阪さんは「サッカー界が難しい時期だからこそ、自分のスキルをサッカーファンの皆さんに還元して、少しでもサッカー界の助けになりたい」と考え、2020年5月、スポニチアネックスで「J通訳が皆伝する英会話術」を連載。さらに翌6月、「最速の英会話術」を伝えるTwitterアカウントをスタートさせました。
ジョージ赤阪さんのとことん実践に基づいた英語学習法に触れるにつれ「英語学習法について書き下ろしていただいたら、サッカーの現場の熱気を伝えつつ今までにない本ができるのではないか」と確信を持ち、社内で企画提案。7月末、無事企画のGOサインが出て、ジョージ赤阪さんにアプローチすることになりました。
ジュビロ磐田HPのお問い合せフォームから、ジョージ赤阪さんに連絡を取りたい旨送ったところ、なんと2時間後には広報担当の方から直接電話が! 後で聞くと、Jリーグの広報担当者は多岐にわたる仕事をしているため、とにかくレスポンス、フィードバックを速くすることを心がけているのだそうです。このスピード感には驚くと同時に、仕事を進める上で非常に頼もしく感じました。
コロナの時代、どう本を作っていくか
新型コロナウイルスが広がりを見せる前、著者候補者に企画を提案する際は、何はともあれ直接お目にかかり、企画書をもとに相談するのが一般的でした。編集者は著者候補者の一挙手一投足、発せられるメッセージに集中し、この人が著者として本当に実現したいことは何か、そのためには編集者としてどんなサポートが必要かを見極めます。
著者として引き受けていただけるとなったら、お互いアイデアを出しながら構成内容を詰め、執筆に取りかかっていただきます。一度お会いすれば、基本的にはメールと電話で連絡すればだいたい事足りたように思います。それほどに、直接会うことは著者と編集者、相互が信頼感を持つために大切かつ必要なステップだと言えました。
それが、新型コロナウイルス感染拡大により、状況が一変。「著者候補者に直接お目にかかる」という、著者との信頼関係を醸成する上で大切にしてきたステップを踏むことができなくなったのです。6月下旬にリーグが再開されて以降、クラブのために全力を尽くし、通訳の仕事で全国を飛び回っているジョージ赤阪さんにお会いするのは、なおさら難しそうでした。
直接会えない部分を補うべく行ったのが、①小まめなメール・LINEのやり取りと、②2週間に1度、2時間超のzoomミーティングです。これを提案してくださったのは、ほかならぬ著者のジョージ赤阪さんです。
私にとっては今までにない密度だったので、初めは正直戸惑いました。しかし、①と②を組み合わせることで、今までお付き合いのあったどの著者よりも、短期間で相互に理解を深め、信頼感を持てるようになったと思います。
どんな些細なことでも忘れないうちに互いに①を行い、都度疑問点を解消する。そして、大きなテーマ、例えば「第3章はどのような構成にするか」「山田大記選手との対談ではどのようなテーマで話すか」といったことについては、zoomで顔を見ながら徹底的に話し合う。そして、次のzoomミーティングで話し合うテーマをざっくり決め、日程を確定させる。このサイクルを回すことで、仕事が格段にスムーズに運ぶようになりました。
編集者の仕事の本質は変わらない
こうして、2020年という「今までとは全く違う年」に生まれた企画は、Jリーグのシーズン終了後の12月23日、『ジュビロ磐田の通訳が教える超実践的英語勉強法』として刊行されました。
本書は、著者が23歳で初めて海外に行き、語学の武者修行の中で編み出した「超実践的な英語勉強法」や、Jリーグ通訳の仕事を通して知ったプロサッカー選手たちの外国語との関わり方、さらには英語・ドイツ語が堪能なジュビロ磐田の山田大記選手との対談など、さまざまな視点から「英語を身につけたい人へのヒント」をお伝えする一冊となっています。
結局、ジョージさんと直接お会いできたのは、10月14日のジュビロ磐田対V・ファーレン長崎の試合後(1-0で勝利!)、22時30分からの1時間半のみです。ジュビロ磐田に関わる人の本を作っているのに、試合を見たことがない状況に耐えられず、ホーム戦を観戦。ようやくお目にかかれたわけですが、不思議と初めて会った気がせず、むしろ「お久しぶりです」に近い感覚だったことを覚えています。
今後も、新型コロナウイルスとは「共存」していく状況は変わらないと思います。それに伴い、著者へのアプローチや仕事のやり方は変化せざるを得ないでしょう。
それでも、著者と心を通い合わせ、「誰かに必要とされる本を届ける」という目標のもと、著者に伴走する編集者の仕事の本質は変わらないと信じ、これからも精進したいと思っています。
▼書籍の詳細はこちら
Jリーグ通訳に学ぶ英語術―ジョージ式で今度こそ英語をモノにする『ジュビロ磐田の通訳が教える 超実践的英語勉強法』、12月23日発売
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からの記事と詳細 ( サッカー×英語、一見「遠そう」なテーマの本は、コロナ禍でどのように生まれたのか? - www.fnn.jp )
https://www.fnn.jp/articles/-/149845
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