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Sunday, May 19, 2024

実はスイス製だった「H3ロケット」部品、短期間製造の工場に潜入 - ITpro

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 彼方(かなた)にアルプス山脈がかすむ町、スイス・ルツェルン州エメン(図1)。日本の国産ロケット「H3」の基幹部品が、実はここエメンの工場で製造されている。

図1 スイス・エメンでH3の部品が製造されている

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図1 スイス・エメンでH3の部品が製造されている

(写真:日経クロステック)

 スイスBeyond Gravity(ビヨンドグラビティ)が製造するのは、宇宙ステーション補給機「HTV-X」を打ち上げるH3基幹部品。ロケット先端に位置する白い殻、「ペイロード・フェアリング(以下、フェアリング)」だ。

 フェアリングは、人工衛星などを宇宙に打ち上げる際、外部の悪天候や圧力、ノイズから保護する役割を持つ。宇宙空間で、この殻が左右に割れ、人工衛星が飛び出す仕組みである(図2)。

図2 ペイロード・フェアリングの内部に人工衛星を格納する

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図2 ペイロード・フェアリングの内部に人工衛星を格納する

(出所:日経クロステック)

 Beyond Gravityは半官半民に近い企業で、全株式をスイス連邦が保有する。

 2022年に「RUAG Space」から改称した同社は、フェアリング分野では“重鎮”と呼べる立場だ。1970年代、欧州宇宙機関(ESA)の「Ariane(アリアン)」ロケットに搭載するフェアリングの最終組み立てから始まった。2024年現在に至るまで、ESAのArianeや「Vega(ベガ)」、米United Launch Alliance(ULA)の「Vulcan」、米航空宇宙局(NASA)の「Space Launch System(SLS)」などのフェアリングを製造してきた。

 HTV-Xの打ち上げは2025年度以降を予定する。エメン工場では、H3のフェアリングが日本への輸送を待つ。「鹿児島県の種子島宇宙センターに船で送る予定だ」とBeyond GravityのManufacturing Engineering LeadであるSam Neuser氏は説明する。

 H3は搭載する衛星や補給機などに合わせて現時点で5モデルを用意している。HTV-Xを打ち上げるのは最大積載量を持つ「24W」で、Beyond Gravityがフェアリングを製造する。静止軌道に6.5tの物体を打ち上げられる(図3)。

図3 Beyond Gravityが製造するH3向けペイロード・フェアリング

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図3 Beyond Gravityが製造するH3向けペイロード・フェアリング

(写真:Beyond Gravity)

 同じ積載量のモデルには「24L」がある。24Lと24Wを比べると、フェアリングの全長は約16.4mと同じだが、24Wの幅が5.4mだ。24Lより0.2m大きい。

 24W以外の4モデルのフェアリングを製造するのは、川崎重工業だ。「なぜ24Wのフェアリングは日本製でないのか。スイス製なのは意外だ」。ロケット分野に詳しい科学技術ジャーナリストの松浦晋也氏はこう首をかしげる。

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