付加価値経営、難しいかじ取り
最終需要の立ち上がりの遅さが電子部品メーカーの業績見通しに影響を与えている。国内電子部品メーカー大手8社のうち6社が2024年3月通期の連結営業利益予想を下方修正した。23年4―12月の営業利益は合計で前年同期比7%減の2704億円で、減少幅が6四半期ぶりに1ケタに縮んだものの、実需の回復が想定より弱い。シェア向上などで主力製品の収益性を高められたかが業績を左右する傾向が今後更に強まりそうだ。
電子部品各社の24年3月期の上期の業績は自社やサプライチェーンに積み上がった在庫の圧縮に追われ、操業度損が発生した影響で低迷した。それでも下期は在庫圧縮の進展で実需に応じた発注が入るようになり、24年1―3月に増益転換するとの見方が多かった。だが今回、村田製作所とTDK以外の6社が通期営業利益予想を引き下げた。オムロンとアルプスアルパイン、ミネベアミツミは1―3月も営業赤字または減益の継続を見込む。
在庫が月商の何カ月分かを示す回転月数は23年10―12月で2・8カ月(8社平均)と、4―6月の3・2カ月(同)より低下。自社在庫の圧縮は「終盤」(野村証券の秋月学アナリスト)が近いが、肝心の実需が立ち上がらないためだ。
「底を脱したが、急な拡大に結びつくとは感じない」。スマートフォン需要について村田製作所の村田恒夫会長はこう話す。中華系スマホの底打ちはアフリカなど新興国で中・低価格帯の機種が売れているため。最大市場の中国での高価格帯機種の販売はまだ弱い。日本の電子部品メーカーは高価格帯機種でシェアが高い傾向があり、現状は「(日本の電子部品の)回復に寄与していない」(京セラの谷本秀夫社長)。
中国の個人消費の伸び悩みは電気自動車(EV)にも影を落とす。ニデックは中国EV市場の価格競争が想定以上に激化し、駆動装置(イーアクスル)の利益が悪化。永守重信会長兼最高経営責任者(CEO)は「中国の成長感は止まっている」と話す。北米ではIT大手が生成人工知能(AI)向けに資金を集中させた結果、データセンター投資が低調となり、京セラの半導体パッケージやミネベアミツミのボールベアリングの回復が遅れている。
一方、TDKが上方修正したのは柱の小型電池でスマホの薄型化や軽量化に寄与できる新製品を投入し、中華系スマホでシェアを高められたのが一因。村田製作所は予想を据え置いたが、中・低価格帯スマホ部品でも利益を出せるようコスト管理を徹底している。
アルプスアルパインは現行の中期経営計画を取り下げ、規模拡大にこだわらず収益体質を変えるとした。ニデックはEVに軸足を置く成長戦略を軌道修正し、インドのエアコン向けモーター市場などの開拓を強化する。
将来の回復局面に備えた設備投資も不可欠だが、需要の見通しを誤ればROIC(投下資本利益率)の低下を招く。賃上げしながら利益率を上げていけるように付加価値を増やす経営が出来るか、電子部品各社には難しいかじ取りが求められる。
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