急速に電気自動車(EV)シフトを進めるドイツでは、経営や雇用にどのような影響が出ているのだろうか。完成車メーカーより影響の大きい部品メーカーの動向を追う。
ドイツではエンジン関連の生産量が多い
2021年1月、ドイツ銀行のアナリストが、電気自動車(EV)シフトについて、衝撃的なリポートを発表した。「ドイツ自動車産業集積地のデトロイト化」に警鐘を鳴らすというものだ。自動車生産で栄えた米デトロイトでは、1970年代ごろから自動車工場の閉鎖や部品メーカーの倒産が起こり、大量失業につながった。リポートはドイツの自動車産業を当時のデトロイトと比較するような内容となっている。
「EVシフトとデジタル化の波の中で、ドイツにおける自動車生産が生産コストの安い国外に流出するリスクがある。デトロイトが米国の自動車生産の中心地だった時代があったが、労働コストなどの問題から他の地域に生産が流出した。生産コストの高いドイツでも、自動車産業とそのバリューチェーンが直面する課題は非常に大きい」としている。
この警鐘からすると、昨今の完成車メーカーの業績は意外感があるかもしれない。フォルクスワーゲン(VW)グループとメルセデス・ベンツグループ、BMWの独大手自動車メーカーの22年度決算はいずれも好調だった。
その理由は主に2つある。1つは、EVは利益が出しづらいと言われるものの、現状はエンジン車が主力である点だ。もう1つは、新型コロナウイルスの感染拡大以降、半導体不足などで完成車の生産が追いつかない状況が続いており、需要が供給を上回り値下げ幅が小さくなっているのだ。
一方、リポートのようなEVシフトの影響がいち早く及んでいるのが、部品メーカーだ。完成車メーカーに比べて企業規模が小さいものの、EVシフトに合わせて大規模な事業の構造転換が必要であるため、赤字への転落や人員削減につながるケースもある。
約27万5000人の雇用が危険に
非上場企業が多いので業績の比較が難しいが、EVシフトが進むドイツでは、部品メーカーが人員削減を進めているのは確かだ。自動車部品世界最大手のボッシュはエンジン関連の部品の生産が減少し、人員を削減している。
欧州自動車部品工業会(CLEPA)は21年12月、エンジン車からEVへのシフトにより、約27万5000人の雇用が危険にさらされると警告している。
35年までにエンジン車の新車販売が禁止された場合、EV向けパワートレーン製造に22万6000人の新規雇用が見込まれる一方、エンジン部品製造の部品メーカーで働く50万1000人の雇用が脅かされると試算。部品メーカーは完成車メーカーとの長期契約に縛られているため、機敏に反応することができない。そのため、CLEPAは完成車メーカーよりも部品メーカーはEVシフトの影響を受けやすいと指摘している。
からの記事と詳細 ( 「EVリストラ」、独部品会社が震源地に エンジン生産縮小が直撃 - 日経ビジネスオンライン )
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