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Thursday, September 1, 2022

全ての交換部品をそろえよと言う無能の工場長を見限った工場 - ITpro

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ゲンバはこうして崩壊した

本当に怖い基礎力「ものづくり1.0」の弱体化

第71回 リスクマネジメントの崩壊

古谷 賢一

ジェムコ日本経営本部長コンサルタント、MBA(経営学修士)

全3519文字

崩壊の顛末(てんまつ)

 多くの設備を用いて生産を行っている工場がある。これをR工場と呼ぼう。このR工場では、旺盛な需要に対応するために高い稼働率を維持することが重要課題になっていた。製造課では、設備のチョコ停をいかに減らすかといった取り組みを進めることはもちろん、設備故障などのトラブルによる停機をなくすために日々のメンテナンスを積極的に行っていた。しかし、それでも設備故障は発生してしまう。そのために、R工場には保全課が存在しており、設備故障が発生した場合にすぐ対応できるようにさまざまな交換部品を予備として保有し、トラブルが発生するとすぐに修理対応を行っていた。

 もちろん、壊れたら交換する修理にとどまらず、過去からの修理記録を分析し、いつどの箇所が故障するかを確率的に推定できる部品もあり、壊れる前に交換する「予防保全」も手掛けていた。推定される故障時期が近づくと生産への影響を考慮した計画停機を実施し、故障する前に新しい部品に交換するのだ。

 しかし、故障の予測が難しく、偶発的に故障してしまう部品もある。全ての部品を予備で保有するのは合理的ではないので、設備への影響度や調達のしやすさなどを考慮し、特定の交換部材を予備に保有して、故障したときにはすぐに修理を行うといった対応をしていた。そんなR工場に、新しい工場長のA氏が就任したことをきっかけに、大きな波乱が起こった。

(作成:日経クロステック)

(作成:日経クロステック)

[画像のクリックで拡大表示]

 A氏が工場長に就任して早々、大きな設備トラブルに見舞われたのだ。保全課には、故障した箇所の交換部材がなかったため、新たに部品メーカーに交換部品を手配することになり、2日間の設備停機を余儀なくされた。

 営業部門の出身だったA氏は、この事態を重く見た。「なぜ、必要な交換部品を常備しておかなかったのか!」と、保全課長を強く叱責すると同時に、全ての交換部材を確実に保有して、設備故障における停機時間のミニマム化を実現せよと厳命した。しかし、保全課長はこう反論した。「故障の頻度や、推定される故障の可能性、そして交換部品の調達納期などを踏まえて、持つべき交換部材を選別するのが、一般的な保全の考え方です。今回のトラブルを踏まえて、保有する基準の見直しは必要だと考えますが、故障の可能性のある全ての部品を保有することはナンセンスです」と。これにA氏は激怒。「長時間の設備停機を引き起こした揚げ句、この期に及んでまだ持つべき交換部材を選別すべきだと考えるのか」と、保全課長を別の部門に飛ばしてしまった。

 保全課はもちろん、製造課など他の部門の人たちは“元”保全課長に同情的で、「部品全部を買えって、どこからそんな金が出るんだ?」、「そんな大量の交換部品をどこに置くんだ?」と首をかしげていた。しかし、A氏はそれらの意見に耳を傾けることなく、「あらゆる故障リスクに対応せよ」の一点張り。工場のメンバーは、現場をろくに見もせず責任者としての判断を放棄して、ただ「リスクをゼロにせよ」と声高に叫ぶ新工場長を「何も決断できない無能な工場長だ」と見限ってしまった。

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