先進7カ国(G7)が合意した各国共通の法人税の最低税率(15%)導入について中国が抵抗していることが27日、分かった。海外からの投資を呼び込むため法人税を減免する「経済特区」を対象から外すよう求めている。ただ、米国は例外を認めない構えで、最低税率の国際合意化が事実上決着する7月9、10日の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、G7と中国の対立で協議が難航する恐れもある。
交渉関係者によると、中国は経済特区の適用除外が認められなければ、G20での最低税率の合意に反対する意向だという。同様の特区制度を持つ一部の新興国が中国の主張に理解を示しており、G7と中国は賛同する国を増やそうと水面下で綱引きを続けている。
中国の法人税の基本税率は25%で、G7が最低税率としたい15%を上回る。ただ、日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、沿岸部の「深圳経済特区(広東省深圳市)」などでは一定期間の法人税免除や半減を実施。減免期間後の税率も15%を下回るケースが多い。経済特区は長年、中国の高い経済成長率の源泉となっており、国際的な最低税率の導入が自国の発展を阻害することを懸念している。
一方、イエレン米財務長官は16日の米議会公聴会で、中国を念頭に「最低税率(の効果)を大幅に弱める、いかなる例外規定にも同意するつもりはない」と牽制(けんせい)した。特区制度を利用した抜け穴を認めれば、G7合意で歯止めをかけたはずの国際的な法人税の引き下げ競争に逆戻りする恐れがあると警戒感を強める。
G7と中国の主張に対し各国の態度は割れた。G20参加国の南アフリカ、インドネシア、メキシコの財務相は10日の米紙への寄稿でG7案への支持を表明。経済協力開発機構(OECD)と欧州連合(EU)にそれぞれ加盟し、法人税率12・5%のアイルランドは「われわれは現行の12・5%を支持する」(ドナフー財務相)とG7案に反対する。30日~7月1日に開かれるOECDの国際的な法人税改革に向けた交渉会合は、G20会議の前哨戦となり、議論の行方が注目される。
■国際的な法人税改革 低税率国やタックスヘイブン(租税回避地)を利用した企業の節税を防ぎ、各国間の税収配分を公平にする税制改革。世界共通の「最低税率」と、その国に本社や工場などの事業拠点がなくてもサービスの利用者がいれば徴税できる「デジタル課税」の導入が柱となる。巨大IT企業を抱える米国のトランプ前政権が反発して議論が停滞していたが、米国の政権交代で急速に歩み寄りが進み、6月初めの先進7カ国(G7)財務相会合では最低税率を「少なくとも15%」とする案を共同声明に明記した。
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