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Thursday, February 25, 2021

サッカー選手のお金とセカンドキャリアの因果関係 - 年俸120円Jリーガー安彦考真のリアルアンサー - サッカーコラム - ニッカンスポーツ

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サッカー選手が試合後のインタビューで「サポーターのみなさんのおかげです」と話している姿をよく見かける。僕はこうしたきれい事のような定型文コメントに違和感を感じています。リードしたまま試合終盤を迎え、勝利まで残り1分。実際には「あともう少しで勝利給が貰える」と思い、最後の1歩を踏み出して戦っている選手の方が多いのではないでしょうか。

もちろん、そんなことを考えてプレーする選手ばかりではないことは分かっています。勝負を分ける、その瞬間に「お金!」と思ってその一歩を出している選手はいないはずです。ただ、選手のセカンドキャリアの問題はここにあると思っています。

例えば、年俸交渉について常に思う疑問があります。それは「交渉しているうちはそこに価値がない」ということです。加えて、現在はほとんどの選手が代理人をつけ、交渉を任せています。

しかし、代理人はあくまでも他人です。僕は自分の値付けを他者に任せることで失われるものがあると思っています。それは「価値」です。価値とは、その人がどれだけ本気で人生をかけたかという時間です。それが希少性となるわけです。代理人は選手の価値を「わかったふり」はできますが、選手の価値の本質を説明することはできないと思います。

交渉は「価値の説明」です。代理人とクラブによる交渉の中では主従関係が自然と作られ「あなたでなければダメです」という対等な関係を構築することができなくなると私は感じています。本当に価値がある選手は交渉などしなくても相応の評価が他クラブからも寄せられ、あとは取捨選択をするだけなのです。

アスリートはそのスポーツを行うことで得られる収入だけでは意外と稼げません。野球のメジャーリーグや、欧州サッカーのトップ選手でもアスリート1本の収入ではなく、その価値を利用したスポンサー収入など他の部分で稼いでいるのです。

Jクラブでは多くのクラブが年俸を月割りで支払っています。1000万円の年俸を月々でもらえば約85万円です。この瞬間に85万円の中でできることを考える人になってしまいます。1000万円というのは1年間の補償ではなく、1000万円を貰える「価値」があるということです。手元にあるのが85万円と1000万円では、やれることが大きく変わります。しかし、月割りで給料を受け取っていると、85万円の中でできることを考えてしまいます。それが車や家となってくるわけです。

しかし、その金額がこれから先もずっと続く保証はありません。ならば1000万円という現金の価値と、1000万円を貰える自分の価値をフル活用した方がいいはずです。サッカー選手として本当に伝えたいメッセージは何か?人生の大半をかけてきたサッカーというスポーツを通し、あなたが得たいものは何でしょうか。

憧れはお金で買えます。しかし、自分の幸せはお金では買えません。お金に支配されることで、自分の幸せと向き合う機会を失っていくのです。「やべっちFC」が終わり、「スーパーサッカー」も先日、終了が発表されました。民放からサッカー番組が消えるのは、世の中における「Jリーグ」「Jリーガー」のニーズの減少もあると思います。

そうなれば自ずとセカンドキャリアの問題も深刻化します。Jリーガーという貯金でセカンドキャリアを考えられていた時代の終焉(しゅうえん)です。自分の価値を忘れ、Jリーガーとしての値付けで生きていけば、サッカー選手としてピークアウトする時に、人としてもピークアウトしてしまいます。

選手時代を人生のピークにせず、いくつものピークという山を重ね、峰を作っていくように準備しなければなりません。自分の価値をお金に換算せず、もっと本質を突き詰めていくことが大事だと思います。その本質とは、サッカー関係者ではない人が「なるほど!それはそうだね」と声をそろえてくれることです。

そのためには、サッカー選手という軸足をどこかで外して考えなければいけない時があります。それは副業やデュアルキャリアなどといった言葉遊びではなく、自分と向き合い、何を表現しようとしているのかを悩みに悩む時間のことです。

「何のためにサッカー選手になったのですか」

この問いにすぐに答えられるよう、日々自分の人生と向き合わなければ、セカンドキャリアを職業探しと勘違いし、路頭に迷うことになります。セカンドキャリアとは職業のことではないのです。

自分の好きなことに夢中になり、日が暮れてもサッカーボールを追いかけ、たどりついた姿が「サッカー選手」という憧れを生み出したのです。ゴッホが人気である理由のひとつは、絵を完成させるために何年もの歳月をかけた点だといいます。ひとつひとつを丁寧に仕上げたからこそ、100年以上もゴッホは歴史とともに残っているのだと思います。

Jリーグ百年構想を本気で考え直し、Jリーガー百年構想に本気で取り組まなければ、100年後には日本でJリーグが必要とされていないかもしれません。私利私欲や損得で目の前のお金を追いかけず、本気で自分の人生をかけてきた証を、サッカー選手として見せることを忘れてはいけないと思います。

僕は格闘家へ転向した今でももちろんサッカーが大好きです。100年後のJリーガーや100年後のファン、サポーターから「ありがとう」をもらえるように、ひとつひとつの言動、行動に魂を込めて活動していきたいと思っています。

◆安彦考真(あびこ・たかまさ)1978年(昭53)2月1日、神奈川県生まれ。高校3年時に単身ブラジルへ渡り、19歳で地元クラブとプロ契約を結ぶも開幕直前のけがもあり、帰国。03年に引退するも17年夏に39歳で再びプロ入りを志し、18年3月に練習生を経てJ2水戸と40歳でプロ契約。出場機会を得られず19年にJ3YS横浜に移籍。同年開幕戦の鳥取戦に41歳1カ月9日で途中出場し、ジーコの持つJリーグ最年長初出場記録(40歳2カ月13日)を更新。20年限りで現役を引退した。同年12月には初の著書「おっさんJリーガーが年俸120円でも最高に幸福なわけ」(小学館)を出版。オンラインサロン「Team ABIKO」も開設した。175センチ、74キロ。

格闘家として元K-1ファイター小比類巻貴之氏(左)に指導を受ける安彦
格闘家として元K-1ファイター小比類巻貴之氏(左)に指導を受ける安彦

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