2024年は自動車部品メーカーにとって勝負の年となる。取引先の自動車メーカーは既存事業の稼ぐ力を高めながら、電気自動車(EV)やソフトウエア定義車両(SDV)などに取り組む戦略を鮮明にする。経営資源(リソース)が限られる中、部品メーカーにもこうした動きに呼応し、既存事業の拡充や新事業の創出が求められている。(名古屋・川口拓洋、同・増田晴香)
能登半島地震などを踏まえ、「大変な年になるだろう」と厳しい表情を見せるのはアイシンの吉田守孝社長。同社のグループ企業で地震により被害を受けた工場もあり「まずは一日も早く立て直す」と前を向く。トヨタ紡織の白柳正義社長も地震の影響を含め「先行きは見通せない」と語るものの、主要取引先のトヨタ自動車をはじめ、自動車メーカーの生産・販売台数は「順調だと思う」と期待を込める。
24年の注目事項は前年から継続して自動車メーカー各社の電動化対応。中国を中心に23年はEVシフトの風が吹き荒れたが、一方で「過熱気味」との認識も広まる。ハイブリッド車(HV)などの需要も依然根強い。既存の部品で利益を稼ぎつつ、中長期的に一定の割合を占めるであろう電動化製品の開発を進められるかが焦点だ。
「24年は実行の年」と位置付けるのはデンソーの林新之助社長。半導体やソフトウエアなど基礎技術に磨きをかけながら、電動化や先進運転支援システム(ADAS)などモビリティーの進化に対応する。「これまでさまざまな準備をしてきた。ソフトとハードウエアの両面でしっかりと対応する」(林デンソー社長)と意気込む。
豊田合成の齋藤克巳社長は「EVの普及状況は地域によって違うが、間違いなく伸びる」とし「中国などEV化が進んだ地域に挑み、自分たちを鍛える」と方針を示す。
自動車販売の最大市場でありEV化も進む中国の動向は気になるところ。ただ、競争環境は厳しい。東海理化の二之夕裕美社長は「戦い方が変わってきている。難しい市場」と捉える。特に同社が主力とする自動車向けスイッチは中国では競合も多い。「日本国内ではなく、中国で技術を自由に開発することも必要になる」(二之夕東海理化社長)と対応策を練る。
23年と異なり、新型コロナウイルス感染症や半導体不足といった、企業単独ではどうにもできない課題は解消された。ある業界関係者は24年の見通しについて、自動車メーカーが次世代車向けに「特色を出してくるだろう」と予測。部品メーカーには「(メーカーの)ニーズに刺さる技術や品質をうまく提案していくことが求められる」と指摘する。
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