電子情報技術産業協会(JEITA)が30日発表した日本メーカーによる2023年4―9月の電子部品世界出荷額は、前年同期比4%減の2兆1708億円だった。年度上期として3年ぶりのマイナスとなった。上期の前半は顧客が在庫圧縮を進めた結果、実際の需要以上に出荷が減少。中華系スマートフォンや電気自動車(EV)の在庫調整が一巡した後半からは実需見合いの出荷に戻り始め、為替の円安も再加速したが、大幅な回復には至らなかった。
品目別の出荷額は、スマホや自動車の中で電気を一時的に蓄えたり放出したりして回路のノイズを除去し、電圧を安定させるコンデンサーが同7%減の7194億円。スマホなどの電子機器に電気を通すケーブルの端子となるコネクターは同12%減の3034億円だった。
電子部品の出荷額に占める海外向け比率は約8割と高く、海外の顧客との決済はドル建てが主流。為替の円安は円換算した際の売り上げを押し上げる。ただ23年4―9月は前年同期より約5%円安が進んだものの、出荷額はマイナスだった。
4―6月は中華系スマホメーカーやEVメーカーなど幅広い分野の顧客が積み増していた部品在庫の圧縮を進めた結果、電子部品メーカーの受注が実需以上に落ち込んだ。特に中華系スマホは、買い替え周期が延びていたところに中国の景気の低迷が追い打ちをかけ、実需自体が低調だった。電子部品は実需をさらに下回る出荷となったことで、円安進行のプラス効果が打ち消された。
それでも中華系スマホやEVの在庫調整は6月ごろまでに一巡し、夏以降は電子部品の出荷も回復し始めた。ただ回復のペースは想定以上に緩やかで、7―9月の出荷額も前年同期の水準を上回れなかった。
中華系スマホは中国国内で不振が続く一方、インドなど新興国での販売は伸びている。ただこうした地域で売れるのは、価格の低いミドルやローエンド端末が中心。使われる電子部品の個数はハイエンド端末向けより少ないほか、価格の高い先端部品の使用も少ない。
EVでも高い信頼性が求められるパワートレーン(駆動装置)向けの部品を含め、顧客からの値下げ圧力が強い。車内の表示パネル向けなどパワートレーン以外の領域では汎用部品の採用が増え、中国地場の電子部品メーカーとの価格競争も一部で生じているもようだ。スマホやEVの販売台数回復が電子部品の出荷額の伸びに結びつきにくい状況が生じつつある。
また産業機器や汎用データサーバーなどの分野では、顧客の在庫調整がいまだ終了しておらず、コネクターの伸び悩みにつながったとみられる。
10―12月には中国でもスマホ販売が前年同期比で増加に転じるとの見方があり、ハイエンド機種の需要増加につながる可能性はある。今後は回復の持続力や勢いが問われる局面になりそうだ。
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