車載向け需要、堅調に推移 中国減速など懸念材料も
日刊工業新聞は「次の成長へ 半導体・電子部品商社」を連載し、各社のトップに取材をした。特に興味深いのは在庫の増加だ。コロナ禍に伴うサプライチェーン(供給網)寸断や中国・上海市でのロックダウン(都市封鎖)などを背景に半導体不足に陥り、バッファー(緩衝)の役割を持つ商社も在庫を積み増した。ただ直近ではモノ不足が緩和したほか、中国経済の減速を踏まえて在庫調整に入った例もみられる。連載番外編として、商社の在庫から市場を読む。(阿部未沙子)
「予想よりも景況感の回復が遅れている」。日本半導体商社協会(DAFS)の大西利樹会長は、こう指摘する。DAFSが会員企業を対象に実施した9月の景況感アンケートからは、受注低迷や在庫過剰に悩む半導体・電子部品商社の現状が浮かび上がる。
2022年9月の調査開始以来、受注DI(受注が「良い」「やや良い」と答えた企業の割合から「悪い」「やや悪い」の割合を引いた値)は最低で、在庫DI(在庫が「過剰」「過剰気味」と答えた企業の割合から「やや不足」「不足」の割合を引いた値)は最高となった。受注DIは6月比25ポイント減のマイナス75で、在庫DIは同6ポイント増の78だった。
コロナ禍に伴う半導体などの品不足を背景に、顧客は商社に積極的な先行発注をせざるを得ず、顧客も商社も在庫が増えた。「産業機器に使われる半導体全般でスローダウンしている」(東京エレクトロンデバイスの徳重敦之社長)など、在庫の適正化には時間がかかるとの見方が出ていた。コアスタッフ(東京都豊島区)の戸沢正紀社長も、特に産業機器向けの市場に関して「(顧客が)在庫調整に苦労している」と受け止める。
他方、自動車生産台数の回復を背景に、車載向けの半導体への需要は堅調とする商社が多い。伯東の阿部良二社長は「車載向けの半導体は活況が続くだろう」とし、グローセルの上野武史社長は23年度下期について「順調に出ていくだろう」と語っていた。「電気自動車(EV)向けの引き合いが多い」(佐鳥電機の佐鳥浩之社長)と直近の状況も好調。カナデンの本橋伸幸社長は「EV向けにパワーデバイスを優先する影響で(パワーデバイスの需給)はタイト」とした。
在庫の増加をチャンスと捉える商社もある。余剰在庫の買い取りや販売を手がけるリバウンドエレクトロニクス(横浜市港北区)の塚原雅之社長は「引き合いが非常に増えている。(3月期決算の企業が多いことから)24年1―2月には一段と増えるのではないか」とみる。
丸文の飯野亨社長は23年11月の決算説明会で「半導体の領域では供給網が回復し、顧客側も在庫を持ち始めている。調整期間に入っている状況で、今後も在庫圧縮を進める」と強調。DAFSが実施したアンケートでも先行きについて受注と在庫がともに改善する見通しとした企業が多く、明るい兆しがみられる。
他方、中国経済の減速など懸念材料は残る。商社は、市場動向を踏まえながら在庫を適正な水準に戻す必要がある。
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