ロシア国営ガス大手ガスプロムは8月30日、フランスのエネルギー大手エンジーに対し、天然ガスの供給を9月1日から停止すると通告した。エンジー側の料金未払いが原因としている。需要が高まる冬を前に、欧州の天然ガス供給不足への懸念がさらに強まりそうだ。フランスはアルジェリアなど天然ガス調達先の転換を急いでいる。
ロシアによるウクライナ侵攻以前、ロシア産天然ガスはエンジーのガス輸入の17%程度を占めていたが、現在は4%程度に低下している。フランスのガス備蓄は現在9割の水準に達しているが、仏政府はさらに国内のエネルギー供給を安定させる方策を検討している。
欧州でのガス価格の指標となるオランダTTFは26日、1000キロワット時当たり一時343ユーロ(約4万7000円)の過去最高値をつけた。ロシアはドイツと結ぶ天然ガスパイプライン「ノルド・ストリーム」の供給量を絞っており、冬を前に供給が完全に停止する懸念が背景にある。
ガス価格の高騰は電気料金も押し上げている。さらに、フランスでは国内の原発の原子炉56基のうち32基が点検などで停止しており、電気料金の値上がりを加速させている。このため、フランスは周辺国からガスや石炭火力発電による電力の輸入を増加せざるを得ない状況に陥っている。ボルヌ首相は29日、省エネ計画を9月中にまとめるよう国内企業に求めた。
フランスはガス供給不足に備え、天然ガス産出国であるアルジェリアとの関係強化を進めている。マクロン大統領は27日、アルジェリアを訪問し、両国の協力を強化する「アルジェ宣言」に調印した。訪問にはエンジーのトップも同行。仏ラジオによると、アルジェリアはフランス向け天然ガスの輸出を50%増加させる検討に入り、エンジーは、アルジェリア国営エネルギー企業ソナトラックと、フランス向けのガス供給増加の中期契約について議論しているという。【ブリュッセル宮川裕章】
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