ADR交渉が不調に終わったマレリは異例の簡易再生手続きに突入する(撮影:鈴木紳平)
負債総額は約1兆2000億円と、製造業で戦後最大級の経営再建劇は、裁判所の監督下で進められることになった。
自動車部品大手のマレリホールディングスは6月24日、法的整理である民事再生法の「簡易再生手続き」の適用を東京地裁に申し立てた。私的整理であるADR成立に向けた債権者集会を同日東京都内で開いたが、条件となるすべての金融機関の同意が得られなかったためだ。
当初計画し、交渉に3カ月以上かけて積み上げてきた事業再生ADR(裁判外紛争解決手続き)成立の算段は脆くも崩れ去った。法的整理に移行することについて、関係者からは「信用に傷がつくことは避けられない」との声も聞こえる。
事業再生ADRから簡易再生手続きへの移行は昨年の法改正で可能になったばかりで、適用されればきわめて珍しい事例となる。経済産業省幹部は「(成立すれば)本邦初適用だ」と話す。
マレリは3月1日、コロナ禍などによる業績悪化を背景にADRを申請。ADR成立には26にも上る金融機関すべての合意が必要で、支援企業(スポンサー)の選定や再建計画案の策定を進めながら債権者集会を複数回開いてきた。
一方で、5月にはマレリの親会社であるアメリカの投資ファンド、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)をスポンサーに選定し、KKRが新たに830億円の増資を引き受ける形で再建計画をまとめている。
ところが、マレリの経営危機を招いた責任があるはずのKKRが再びスポンサーの座につくことに金融機関側から不満が噴出。債権者の中には中国や台湾、シンガポールなど海外の金融機関が名を連ねており、国内金融機関からは足並みをそろえられるか不安視する声が上がっていた。
結局、最終の債権者集会では再建計画に90%以上の金融機関が同意したものの、中国系の複数の金融機関が反対に回った。
債権者の60%の合意で可能
ADRの成立に向けた合意形成に努めた場合はさらに時間がかかり、それだけ再建が遅れることになる。そこでマレリ側が打って出たのが簡易再生手続きだ。
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