【ワシントン=鳳山太成】バイデン米政権は24日、ウクライナに侵攻したロシアへのハイテク製品の輸出規制を発動した。日本や欧州連合(EU)などと協調し、半導体やセンサーの輸出を止める。「ロシアの軍事、航空宇宙、造船が主な標的」(米商務省)。効力は中国の出方が左右する。
米商務省によると、半導体や通信部品、センサー、航空機部品、レーザーなど特定のハイテク製品の輸出規制を厳しくする。米国製品のロシアへの輸出を許可制とし、申請は原則却下する。
米国の輸出規制は域外適用が特徴で、米国外で製造した製品をロシアに輸出する日本企業などにも規制の網がかかる。米国外で製造した製品も市場価格ベースで25%超の米国製の規制品目を含んでいれば、輸出を止められる可能性がある。
米国は「米国と同盟国への影響を最小化するよう設計した」(バイデン大統領)とも説明。様々な例外規定を設けた。
スマホなど消費者向け通信機器はロシア政府関係者に売らない限り、規制の対象外とした。日米欧企業のロシア子会社に輸出する場合も、個別判断で輸出を認める。完成車は原則輸出できる。
輸出規制は日米欧、オーストラリアや台湾などが足並みをそろえた。
日本も25日、半導体など米国と同様のハイテク製品の輸出規制を打ち出した。企業がロシアへ輸出する場合、事前申請して経済産業相の許可を得る仕組みとする。
3月に改正する見通しの政令で詳細を示すため、現時点で不明瞭な点も多い。日本のメーカーから「規制対象になる範囲を明確にしてほしい」との声があがる。半導体といっても、単品での輸出に加え、様々な部品や製品に組み込まれた状態で輸出するケースもある。
経済官庁の担当者は半導体など規制対象の品目が「製品に組み込まれて簡単に取り外せない状態になっている自動車やスマホ、パソコン、家電などは輸出規制を想定していない」と説明する。
日本はあらゆる種類の半導体の輸出が規制対象なのかも不明瞭だ。米政府が20年に中国の華為技術(ファーウェイ)への輸出規制を厳しくした際も、技術水準が低い半導体は事実上、例外扱いにして輸出を容認した。
輸出規制の効力は中国が米国の規制を守るか次第という面もある。米規制の域外適用を中国が拒み、ロシアへの輸出を続ければ「抜け穴」となって効力は薄れる。
そこでバイデン政権は米国外で生産した製品について、製造過程で米国の技術を使っている場合も輸出を規制する新規則を取り入れた。
新規則は20年にファーウェイに課した枠組みを転用した。日欧は新規則の対象外で、中国が念頭にあるのは明らかだ。
ファーウェイは日本や台湾との取引を制限され、スマホ販売が大きく落ち込んだ。米国の設計技術や装置がなければ、半導体の製造は難しい。
中国企業が新規則を無視してロシアに輸出すれば米制裁の対象になる。元米政府高官は「中国がロシアを助ければ、米政府から強力な対抗措置を受けると認識しなければいけない」と述べ、当面はおおむね順守するとみる。
一方、ナザク・ニカクタル元商務次官代行(輸出管理担当)は「中国は順守しないのではないか。ロシアへの違法な迂回輸出経路になる」と懸念する。
新規則は「非常に複雑で企業が判断するのは簡単ではない」(首都ワシントンの弁護士)との声もあがる。
米政権は多国間の協調で500億ドル(約5兆7500億円)の輸出制限になると主張する。ロシアの21年輸入額の2割弱に相当する。バイデン氏は「ロシアのハイテク輸入が半減する」とも説明した。一方、米国半導体工業会(SIA)は声明で「ロシアは世界の半導体購入の0.1%未満で大きな需要家ではない」と述べ、米国企業への影響は小さいと指摘した。
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