アラブ首長国連邦(UAE)で開催中のドバイ万博が集客に苦戦している。ドバイ万博公社は18日に来場者が1千万人に達したと表明したものの、会期は半分以上が過ぎ、2500万人の目標達成は微妙な状況。新型コロナウイルス禍で海外客が低迷していることが要因だが、厳しい渡航制限が続く日本で約3年4カ月後に開幕が迫る大阪・関西万博への懸念も広がっている。大阪万博は収益に占める入場料収入の比率が高く、対策の練り直しが必要になりそうだ。
ドバイ万博は昨年10月に開幕。会期は半年間で、当局は目標の7割を海外からの来場者と見込んでいた。UAEは会場建設費に70億ドル(約8千億円)もの巨額を投じたとされる。
ただ、運営にはコロナ禍の影響が色濃くにじむ。ドバイ観光・商務機関によると、2021年1~11月のドバイへの海外からの渡航者数は約602万人。コロナ禍前の19年1~12月は1673万人で、ドバイ万博に出展する日本館の関係者は「海外客の減少が入場者の伸び悩みにつながっている」と指摘する。
コロナの感染は会場内でも広がる。日本館ではスタッフ6人の感染が確認され、先月に3日間の休館を余儀なくされた。隣接するレストラン「スシロー」でも感染者が出たため一時休業した。現地の関係者は「日本以外のパビリオンでも感染者が出ている」とするが、万博公社は「個々のパビリオンの状況を把握していない」と、感染実態について説明を拒んでいる。
海外客が伸び悩んだことで、UAE政府や万博公社は国内からの来場者の獲得に力を入れ始めた。現地報道によると、UAEの国家公務員や国営企業従業員に万博訪問のための有給休暇が与えられ、民間企業でも同様の取り組みが行われている。入場券の無料配布や、大幅な割引も繰り返し実施されているという。
現地の日本企業関係者は「そもそもドバイ当局は入場料で収益を上げようとしていない。多くの入場者数を集めることで、国威発揚につなげることの方が重要だ」と指摘する。
コロナ禍で入場者が低迷する状況は、大阪万博の運営関係者に懸念を与える。大阪万博の基本計画では、会場建設費以外の支出(809億円)の86%にあたる702億円が入場券の販売収入で賄われるためだ。新変位株「オミクロン株」の流行などもあり、25年の開幕時にもコロナの影響が残る可能性が否めず、海外からの渡航制限解除も見通せない。入場者数が伸び悩み、入場料収入が落ち込む事態になれば、万博の収支に深刻な影響を与える。
日本総合研究所の若林厚仁・関西経済研究センター長は「大阪・関西万博は約2820万人の来場目標のうち海外客は350万人の見通しで、ドバイほど海外の状況に左右されない。ただ、ウィズコロナであっても国内客の来場を確保できる施策を早急に検討する必要がある」と警鐘を鳴らす。(黒川信雄)
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