「大きくキレのある音が鳴らないといけない」
鈴は金属なので、それがいくつも固まると表面が硬くなり、そこを何度も蹴ると足を痛めかねない。また表面が微妙に膨らむため、回転が不規則になる。イミオの開発スタッフは、こうしたブラインドサッカー独特の課題と格闘することになった。 「真球性を保つには、鈴を小さく、少なくすればいいのですが、ブラインドサッカーのボールは音が命。大きくキレのある音が鳴らないといけない。その両立に苦心しました。例えば表面の硬さを和らげようと鈴の材質を柔らかくすると、今度は蹴った衝撃で鈴がへこみ、音が鳴らなくなってしまう。音を大きくしようと金属の鈴に穴を開けると、手縫いなので水が染み、錆びて音が鳴らなくなってしまう」 1年にも及ぶ開発の末、イミオは海外製のボールをはるかに上回る「JBFA 公認ブラインドサッカーボール」(税込み5720円)を完成させた。 この10年、日本代表は確実に強くなり、海外勢と好勝負を演じるようになったが、それはJBFA公認ボールの誕生と無縁ではない。 「イレギュラーの多いかつてのボールは、感覚と技術に勝る南米勢に有利でしたが、ボールの質が上がったことで、彼らとの歴然とした差をいくらかは埋められたと思います」 ボールとともに成長した日本のブラインドサッカー。その成果を楽しみにしたい。 初出:Sports Graphic Number 1033・1034号(2021年8月12日発売)
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