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Thursday, June 17, 2021

帝人が自動車部品の「ティア1」に 買収テコに飛び級で昇格 - 日経ビジネスオンライン

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買収した米自動車部品メーカーを活用し、自動車メーカーと直接取引する1次サプライヤーとなった。素材開発で培ったデータ解析のノウハウを生かし、買収先を通じた製造拠点の拡大や生産性向上にもつなげている。ユーザーの困り事や社会課題の解決に、素材の力を生かす。狙うのは会社全体のモデルチェンジだ。

 メキシコ北西部の都市ティファナ。米国との国境沿いに位置しトヨタ自動車の工場もあるこの地に、帝人グループの自動車部品工場がある。

 透明な樹脂とガラス繊維を混ぜ込んだ巨大な黒いマット状の複合材料が、専用の加工機械によって次々に大型の「箱」に組み上げられていく。完成した部品が運ばれる先は、北米などにある完成車メーカーの工場だ。

 ガラス繊維や炭素繊維を使った複合材料は金属より軽く耐久性が高い特徴がある。ただこれまでは難点があった。炭素繊維の場合、一方向に並んだ繊維を樹脂に浸して成形していたため、加工に2時間近くかかってしまうのだ。

 その常識を覆したのが、帝人が開発した炭素繊維を用いた複合材料「セリーボ」だ。アルミニウムや鉄などに比べて40%ほど軽く、衝撃に10倍以上強い。熱を加えると加工しやすくなる樹脂に炭素繊維を散りばめることで、最短1分で成形可能。月産数万台規模の量産車でも採用できるようになった。

GMの量販モデルで採用

 この新素材を自動車メーカーにどう売り込んでいくか。その突破口となったのが、帝人が2017年に約840億円で買収した米自動車部品コンチネンタル・ストラクチュラル・プラスチックス(CSP)だ。

 1969年設立でミシガン州に本社を構えるCSPは、ガラス繊維を用いた複合材料の量産技術で実績がある。完成車メーカーと直接取引するいわゆる「ティア1」企業で、米ゼネラル・モーターズ(GM)や米フォード・モーターなど北米を中心に強い顧客基盤を持つ。

米GMのピックアップトラックの荷台に使われている複合材料。ミシガン州の技術センターなどで複合材料を作り(右上)、帝人とCSPの社員が議論しながら開発を進める(右下)

 帝人は以前から自動車向け複合材料を手掛けてきたが、トヨタの「レクサス」など一部の高級車での採用にとどまっていた。このカベを突き破ったのが、セリーボとCSPの量産技術の組み合わせだ。GMの代表的なモデルであるピックアップトラック「GMCシエラ」シリーズで2019年から採用が始まり、2車種で受注を獲得。帝人は素材を自動車部品会社に納めていた3次下請けの「ティア3」から、「ティア1」へと飛び級で昇格した。

 CSPも以前は課題を抱えていた。売上高営業利益率は10%と収益力は安定していたが、新素材を自社で開発するノウハウに乏しかった。CSP社長で帝人の複合成形材料事業本部長のスティーブ・ルーニー氏は「セリーボは帝人とCSP、GMによる共同開発。先端技術と量産技術を用いることで最高レベルの耐久性を持つ部品を生み出すことができた」と話す。

 CSPは19年に建設を決めた米テキサス州の新工場を、自動化システムを駆使した最新鋭の生産拠点にする計画だ。中国でも車載電池世界最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)、上海汽車集団などが拠点を置く江蘇省常州市に建設中の新工場に加え、第2、第3の工場も検討中という。

 CSPがフランスに持つ研究拠点では新たな複合材の製造ラインを設けたほか、20年にはデザイン・設計拠点も新設し欧州の完成車メーカーの販路開拓を急ぐ。電気自動車(EV)ではこれまで以上に軽量化のニーズが大きくなる。完成車メーカーの新車投入のタイミングに応じて、主要市場のどこでも同じ品質の複合材料を供給できる体制を構築しつつある。

 帝人でマテリアル事業を統括する内川哲茂常務執行役員は「計画より遅れることなく世界の生産体制が整えられているのは、CSPとのPMI(買収後の統合作業)がスムーズに進んでいるからだ」と胸を張る。その鍵となったのが、帝人が長年にわたって培ってきた素材開発のノウハウだ。

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