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Tuesday, April 27, 2021

欧州サッカーの新リーグ構想、米国型の商業主義への反発招く - 日経ビジネスオンライン

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英国のサッカーファンは、欧州スーパーリーグ構想に抗議している(写真:AP/アフロ)

 小中高とサッカー漬けであった筆者が、初めて欧州トップチームの試合を生で観戦したのは、1984年のトヨタヨーロッパ/サウスアメリカカップだった。欧州と南米のクラブ王者のチームが世界一の座を懸けて戦う同大会の通称はトヨタカップ、現在のFIFAクラブワールドカップの先駆けとなっている。当時のサッカー応援の必需品であった銀ラッパ(南アフリカのブブゼラではない)を持参し、胸を弾ませて国立競技場へ行き、テレビでしか見たことがなかった欧州トップチームのプレーに感動したものだ。

 応援していたリバプール(英国)が、インデペンディエンテ(アルゼンチン)と対戦し、リバプールが敗れクラブ王者の称号を逃したことは今でも忘れはしない。ただそれ以上に、「レッズ」の異名をとるリバプールが、ホーム用の赤色ユニホームではなく、アウェー用の黄色ユニホームで登場したことが悔しかった思い出がある。さらに翌1985年にユベントス(イタリア)が来日した同大会もスタジアムで観戦し、当時のフランス代表、ミッシェル・プラティニの、切り替えしながらのボレーシュートを目前で見たことは、筆者のひそかな自慢である(オフサイドと判定され、幻の得点となったが、当時、まねして毎日練習した)。

 トヨタカップは欧州で最も権威のあるUEFAチャンピオンズリーグ(以下、チャンピオンズリーグ)の覇者と南米クラブ王者の対戦だったが、このチャンピオンズリーグに強豪クラブが反旗を翻す事態が起きている。4月18日、米系投資銀行から約32億5000万ユーロ(約4260億円)の資金支援を受けて、チャンピオンズリーグに代わる、欧州スーパーリーグ(ESL)の創設に、(トヨタカップで見たリバプールとユベントスを含む)12クラブが合意を表明した。ESLの試合は平日に行われ、各クラブは国内リーグからは脱退しないものの、チャンピオンズリーグには不参加となる。

 この背景には、2024年シーズンから採用されるチャンピオンズリーグの新たなフォーマットへの不満がある。2024年から、出場チームは4つ増え36となるが、8組に分かれて行うグループステージはなくなる。参加資格のある全チームで同一のリーグで順位を争う。UEFAランキング係数を基にホーム&アウェー方式で10試合行い、順位を決定する。1~8位はラウンド16に進出し、9~24位が残り8枠を巡りプレーオフを行う。出場枠の拡大だけでなく、試合数も100以上と大幅に増える(より収益性の高いトップチーム間の試合も増える見込みである)。

 ESL創設発表は、このようなチャンピオンズリーグの抜本的な改革を阻止するためのものという。4月19日、チャンピオンズリーグを運営する欧州サッカー連盟(UEFA)は年次総会で、予想通り改革案を承認している。さらにこれに先駆け、欧州のトップチーム200超を代表する欧州クラブ協会(ECA)の会合でUEFAの改革案が協議された。ECAはUEFAが提案したフォーマットで改革を進めることに合意はしたものの、改革案についての不満が広がっていた。

 特にESL創設に合意した12の強豪クラブは、ほとんどが各国の代表クラスで構成され、代表戦と国内リーグ・カップ戦の過密日程に、UEFAの改革案が加われば、選手の身体は悲鳴を上げるのは確実で、誰も得をしないと考えている。試合数が増えても、リーグ優勝の賞金は増えず、放映権料が増えることにより得をするのはUEFAとチームオーナーだけとされるためだ。

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