大阪ニュース
2021年1月12日
幅広い層が一つのボールを追いかける「ダイバーシティサッカー」の取り組みが、広がりを見せている。かつては路上生活者を対象にしていたが、現在は性的少数者(LGBT)やひきこもりの経験者なども参加。2020年3月には大阪にダイバーシティサッカー協会も設立されており、年代、性別、生活環境などを超えたつながりを築いている。
路上生活者だけでなく、ひきこもり経験者らも交じって練習する(ダイバーシティサッカー協会提供) |
ホームレスだけでなく、LGBTやひきこもり経験者など幅広い層が参加した「ダイバーシティサッカー」の大会=2019年7月、大阪市西成区(鰐部貴之氏提供) |
スポーツと社会復帰支援とは関係性が深く、サッカーなど集団競技では個人の健康と社会性の回復が期待される。同時に競技を通じて得られた友人、仲間とチームが参加者に「居場所」を提供し、心身ともに安定をもたらすことができる。
■競技通し支援
2000年頃、英国のホームレス支援雑誌「ビッグイシュー」の編集長が、「ホームレスサッカー」という名称でスタートした。5人制のフットサルで戦い、03年には最初の「ワールドカップ」(W杯)が開催された。日本では同雑誌の日本法人を中心に活動し、W杯には04年を皮切りに代表チーム「野武士ジャパン」として11年まで出場した。
一方でW杯参加基準が一生に一度という規定があり、代表チームの編成が困難に。そのため、10年代中頃から国際大会よりも国内での活動に軸足を移した。
当時は08年のリーマンショックの影響が激しく、若い失業者が増加。うつ病など精神疾患を患う人も多かった。同協会の川上翔理事は「路上生活者だけでなく、他の支援団体もサッカーを支援プログラムに組み込んでいることが分かった。ならば、より広い層がスポーツを楽しめる場をつくろうと考えた」という。
■気持ち後押し
名称には多様性という意味を組み込み、15年に「第1回ダイバーシティカップ」を東京で開催。LGBT、フリースクールの生徒ら約200人が参加した。その後も東京と関西で年に一度ずつ開催している。
元「野武士ジャパン」の吉富卓爾さん(50)は「路上生活をしていると、どうしても人との会話が少なくなってしまう」。練習では他のチームや見学に来たひきこもりの経験者などとプレーし、「サッカーを通じてさまざまな人と話ができる」とも。今もトレーニングは欠かさず、「食事などにも気をつけているし、生きる張り合いになる」と笑顔を見せる。
川上理事は「社会復帰の助けとかは後付け」と苦笑する。「どんな人にも、スポーツなど文化的に楽しむ権利がある。多くの人たちのやりたいと願う気持ちを助けたいだけ」という。
昨年は7月と9月に大会を予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止。大阪市内のチームも月2回の練習が中断している。川上理事も吉富さんも「少しでも早く感染が落ち着いて、サッカーができれば」と願いを込める。
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