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Thursday, November 12, 2020

3Dプリンターでつくられた銃の部品が、いまや米国の過激派組織にまで広がっていた - WIRED.jp

3Dプリンターによる実用的な銃が世界で初めてつくられたのは7年前のことだが、この技術が再び注目されている。法律で禁止されている殺傷能力の高い銃を自作できてしまうからだ。

このほどウエストヴァージニア州で始まった刑事訴訟において、極右の武装勢力「ブーガルー運動」の信奉者たちが銃の改造にデジタル技術を利用していた可能性のあることが明らかになった。起訴状によると、同州ランソンに住むティモシー・ワトソンは「Portablewallhanger.com」という自らのサイトで、3Dプリンターでつくった自動小銃の部品600点以上を販売していたのである。

米連邦捜査局(FBI)の調べによると、問題の部品は鍵や洋服をかけるフックのように見せかけて売られていた。例えば、サイトで売られている“壁掛けフック”から不要な部分を取り除くと、「オートシアー」と呼ばれる小さな部品に変身する。このオートシアーを米国で合法的に販売されている半自動小銃「AR-15」に組み込むと、フルオートに改造することができるのだ。

ただし、現行の銃規制において全自動小銃は、はるか昔に登録されたごく一部のものを除いては所持が認められていない。この改造部品も20年以上も前に禁止されている。

ワトソンの顧客には、ブーガルー運動のメンバーが複数いたことが明らかになっている。ブーガルー運動は重火器などで武装した過激派の反体制グループで、米国各地でメンバーが警察官の殺害事件などを起こしている。

ジョージ・フロイドの死によって人種差別撤廃を訴える大規模なデモが全米に広まったが、「ブーガルーボーイズ」と呼ばれる運動の信奉者たちは、こうした状況で暴力を扇動しようとした。なお、ブーガルーとは内戦を意味するとされる。

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ワトソンが販売していた3Dプリンター製の“壁掛けフック”。セミオートの「AR-15」をフルオートに改造するための部品として機能する。SCREENSHOT BY JON LEWIS VIA PORTABLE WALL HANGER

驚くほど簡単な違法改造

FBIは、ワトソンからオートシアーを購入したカリフォルニア州のスティーヴン・カリーロという男が、2件の銃撃事件にかかわった可能性が高いとみている。5月にサンタクルーズで警察官が撃たれたほか、6月にはオークランドの地方裁判所で銃撃戦があり、警備員1人と警察官1人が死亡している。

ジョージ・ワシントン大学の主任研究員で過激思想を専門とするジョン・ルイスは、「わたしが記憶している限りでは、米国内の過激派が3Dプリンターを使って銃の改造に成功したことを示す具体的な証拠はほとんどありません」と語る。ルイスは今回の刑事訴訟に注目した最初の人物だが、「憲法修正第2条を強く支持するグループ、つまり銃を所持する権利を主張しいかなる銃規制からも逃れようとする人たちですが、これらの人々がこの種の技術を採用するのはごく自然な流れです」と説明する。

AR-15の改造は、必要な部品さえあれば驚くほど簡単である。ワトソンのビジネスは、これを悪用したものだ。

AR-15は、引き金を引くとチャンバー(薬室)内のガスが弾を押し出し、ボルト(遊底)が戻ってマガジン(弾倉)から次の弾が装填される。通常はボルトが押し戻されたときにシアーも元の位置に戻るが、オートシアーだとハンマー(撃鉄)が固定されない。このため引き金を引いたままにしておけば、連射が可能になる。

銃の設計図などをネットで公開している組織Defense Distributedのジョン・サリヴァンは、AR-15であればほんの数分でオートシアーを追加できると指摘する。オートシアーは1辺が1インチ(2.5cm)以下の小さな部品で、3Dプリンターでの印刷にかかる時間は10分程度だ。サリヴァンは「パーツそのものはただのプラスティックの固まりで、組み立てすら不要です」と言う。

サリヴァンによると、この部品は弾が発射されるときの衝撃を直接受けることはないので、プラスティックでも問題なく機能するという。だが、使い続けていれば破損することはある。「部品が摩耗します。ただ、3Dプリントの部品なら壊れたら交換できます。時間はほとんどかかりません」

“合法”で頒布される3Dデータ

もちろん、3Dプリンターでオートシアーをつくれば、ほとんどの場合は違法行為となる。米国の銃規制法ではオートシアーそのものが自動小銃とみなされる。そして、全自動の銃火器は1986年以前に登録されたものを除いては所持が禁じられている。サリヴァンは「オートシアーの付いた銃だけでなく、部品自体がマシンガンと同じなのです」と指摘する。「3Dプリンターで印刷すれば重罪です」

ただし、オートシアーは違法であっても、データファイルはそうではない。3Dプリンター用のデータはネットで入手できるのだ。

銃支持派の団体Deterrence Dispensedは、半年前にオートシアーの3Dプリントデータを公開している。ファイル名は「Yankee Boogle」で、明らかにブーガルーを意識したものだ。公開を告知する動画には、実際に3Dプリンターを使ってつくられたオートシアーの画像が含まれている。この動画はYouTubeで20万回以上も視聴されている。

また9月には、ブーガルー運動のメンバー2人がオートシアーをパレスチナのイスラム原理主義組織ハマスの代理人に販売しようとしたとして起訴された。ところがこれはおとり捜査で、ハマスの代理人は本物ではなく実はFBIの捜査員だったという。また問題のオートシアーの製造方法などは明らかになっていない。

362件もの“部品”を発送

今回の事件に話を戻すと、ワトソンは少なくとも3月から自らのサイトでオートシアーを販売していた。PayPal経由で600件以上の支払いがあったほか、46州宛てに362個の荷物を発送していたことが確認されている。

また、ワトソンはカリーロ以外にもブーガルー運動とのつながりがあったことも明らかになった。裁判で証言する予定のブーガルー運動のあるメンバーは、ワトソンのサイトについてブーガルーのFacebookグループで知ったと説明していたという。

このサイトには今年3月、売り上げの10パーセントをブーガルー運動がGoFundMeで実施していたクラウドファンディングに寄付するという広告が載っていた。これはダンカン・レンプという反政府民兵組織のメンバーが警察に射殺されたことに対する抗議活動の資金集めで、レンプはブーガルー運動では“殉教者”とされている。

ワトソンの起訴状には、電子メールやSNSでの顧客とのやり取りの履歴も記載されていた。オートシアーの取り付け方法やトラブルシューティングに関するもので、ワトソンは商品を説明する際に単語などに注意していたようだが、顧客はそうではなかったようである。

例えば、Duncan Socrates Lempという名のInstagramユーザーは、ワトソンの“壁掛けフック”は「アーマライトの壁にしか使えない」と書いているが、これはAR-15を製造するアーマライト社のことだ。booglordincという別のユーザーは、「Red Coat Hanger Packs」という商品を宣伝する投稿に「赤いコートが床に落ちても構わないが、できればちゃんとかかったままのほうがいい」というコメントを残している。商品名のレッドコートとは、ブーガルー運動では革命の敵を指す隠語だ。

SCREENSHOT BY ANDY GREENBERG VIA INSTAGRAM

テクノロジーを活用する過激派組織

3Dプリンターやデジタル技術を駆使してDIYでつくられた武器は、過去10年近くにわたって進化し続けてきた。今回の事件では、暴力的な過激派グループがこうした技術を利用していることが証明されたことになる。

米国では2013年以降、複数の銃乱射事件でゴーストガンと呼ばれる銃規制の網の目をすり抜けるために自作されたAR-15が使用されている。また、今年10月にドイツのハレで起きたユダヤ教の礼拝所シナゴーグの銃撃事件では、やはり自家製のサブマシンガンが使われて2人が死亡した。

3Dプリンターで作成された銃の部品が極右集団のメンバーに販売されていたという事実は、こうした人々が銃を自作する際にデジタル技術を駆使していたことに加え、当局の目から逃れる能力をもつことも示している。また、こうした過激派グループの規模も無視できない。

ジョージ・ワシントン大学のルイスは、「過激派は今後も最新のテクノロジーを利用してテロを起こす活動を続けていくはずです」と語る。「今回の事件で示されたのは、広い意味でブーガルー運動が営利化していることと、その到達範囲の広さだと思います」

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November 13, 2020 at 07:00AM
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