ジョゼップ・グアルディオラ監督は、バイエルン・ミュンヘンに就任して間もなく、当時世界でも屈指の右サイドバックだったフィリップ・ラームの中盤起用に踏み切っている。10年間にわたって現マンチェスター・シティ指揮官のアシスタントを務めていたドメネク・トレント氏はそのドイツサッカーの歴史を変えたとも言われる決定的瞬間を振り返った。
トレント氏は2007年夏、グアルディオラが監督に就任したバルセロナBにそのアシスタントとして入団。バルセロナのトップチームでは2008年夏からの4年間、バイエルン・ミュンヘンでは2013~16年の3年間、マンチェスター・シティでは2018年にニューヨーク・シティFC指揮官に就任するまでの2年間も同監督の下でアシスタントを務めていた。今は欧州への復帰を目指しているため、昨年10月に同クラブでの監督ポストを辞任したという。
現在57歳の同氏だが、ドイツ誌『キッカー』のインタビューでは各国での経験を振り返り、2017年に現役生活を引退したラームの中盤起用についても話している。「マルティ・パラルナウが手掛けたグアルディオラの伝記『ヘア・グアルディオラ』(『ミスター・グアルディオラ』)によると、グアルディオラが2013年のUEFAスーパー杯でのチェルシー戦でトニー・クロースの代わりにフィリップ・ラームを6番(ボランチ)で試したきっかけをつくった当事者が貴方だったのは本当か」と問われると、このように語った。
「クロースはあのチェルシー戦で素早い選手たち相手に問題を抱えていた。そこで私はラームを6番に置くことを提案したんだ。ペップはそれを試し、クロースを8番(インサイドハーフ)に動かした。我々はプレシーズンからラームがパッシングやポジショニングに長けている上、広い視野を持ち、守備に関しても安定感があることを知っていたのだからね」
一方、14年夏にレアル・マドリーに移籍したクロースについては次のように続けている。
「今も世界最高のミッドフィールダーの1人。我々は彼とあの1年間よりもっと長い間ともに仕事をしたかった。チャンピオンズリーグ3連覇を果たしたレアル・マドリーのなかで、不可欠のプレーヤーの1人だったね」
なお、ラームはその後引退までバイエルンでは公式戦70試合ほど中盤でプレー。ドイツ代表でも徐々に6番起用が増え、ドイツが世界王者に輝いた2014年ワールドカップでも複数試合にはボランチとして出場していた。その2013年のチェルシー戦での新ポジション起用抜きでは語れないのはラームのキャリアだけではなく、近年のドイツサッカーの歴史でもあるかもしれない。
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