新型コロナウイルスの感染拡大は、わが国の電子部品産業の業績にも影を落とす。主戦場のスマートフォンや自動車などで世界的にサプライチェーン(供給網)が混乱し、需要そのものも落ち込みが避けられない。ただ業界で悲観的な声はあまり聞かれない。「ピンチだが非常にチャンス。競争力のある会社が生き残り、シェアをとれる」(永守重信日本電産会長)とアフターコロナを見据え、むしろコロナ禍を成長の機会と捉える貪欲ささえうかがえる。
電子部品各社が大きな期待をかけてきた車載市場だが、世界的な自動車の生産停止、販売急落で環境は大幅に悪化している。実際、村田製作所は自動車の世界市場が2019年度の8300万台から20年度は6700万台へと2割落ち込むと予想。しかし村田恒夫会長兼社長は「自動車向け電子部品事業は(20年度)下期に大きく回復する見通し」と、強気の姿勢は崩さない。
感染対策で世界の企業、個人の活動が大きく制約され、経済状況が大きく悪化。車載部品を成長軸に据える電子部品業界も例外ではない。それでも車のCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)への期待は揺るぎない。
日本電産の永守会長は大気汚染改善でヒマラヤ山脈が見えたインド北部を例に挙げ「青空が見えることを誰もが知った。ガソリン代が下がっても電気自動車(EV)シフトは変わらない」と強調。同社ではEV駆動用モーターの受注が増えているという。太陽誘電の増山津二取締役専務執行役員も「当面は基地局向けやサーバー向けに注力し(落ち込んだ)自動車向けをカバーするが、車の電装化の流れは変わらない」と需要回復に備える。
村田製は車載向け売上高を20年度は前期比15%減と予想するが「下期に上期比21%増」(村田会長兼社長)と早々に回復する見立てだ。第5世代通信(5G)サービスが本格化することも想定し、20、21年度でそれぞれ2000億円規模の生産増強を計画している。
京セラも5G関連製品などの需要対応で生産能力は増強する。電子部品はパソコンやタブレット端末向けが堅調で、谷本秀夫社長は「車載の落ち込みをカバーできる」と分析。業績は7月以降、徐々に回復して年度末に正常化する絵を描く。
新型コロナが世界にもたらす「ニューノーマル(新常態)」。産業界でも自動化のさらなる加速が予想され、専門商社のサンワテクノスの田中裕之社長は「需要をうまくキャッチアップしていきたい」と意気込む。関潤日本電産社長はコロナ禍によって、完成車メーカーはCASE一つひとつの莫大(ばくだい)な開発費負担がより難しくなるとし「我々のような、第三者から買う動きが加速する」と自信を示す。
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