毎週金曜日夕方掲載
本レポートに掲載した銘柄:ディスコ(6146)
特集1:半導体、電子部品セクターのフォローアップ
1.2020年2月の世界半導体出荷金額は前年比7.1%増、前月比0.2%減
今回は、3月決算シーズンを前に、半導体、電子部品セクターの現状を統計と市況を通して確認したいと思います。決算レポートではディスコを取り上げます。
まず、世界半導体出荷金額の動きからです。2020年2月の世界半導体出荷金額(単月)は334億300万ドル(前年比7.1%増、前月比0.2%減)となりました。季節的には1月、2月は正月明け、春節と営業日が減る要因があるため、単月出荷額は普通10-12月期に比べ減少します。ただし、世界半導体出荷金額(3カ月移動平均)のグラフを見ると、2月は再成長の途上ではあるものの、やや調整気味という感じがします。後述するように、スマートフォン用、パソコン用CPUの生産はかなり高水準と思われますが、ディスクリート半導体も併せて考えると、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大に伴って、スマホ、パソコンのサプライチェーンに支障が生じている影響が半導体市場にもやや出ているように思われます。
今後の焦点は、まず、4月以降のパソコン、特にインテルのCore i7クラスのCPUを搭載し、メモリ容量が大きく(8Gバイト以上)、HDDに代わってSSD(NAND型フラッシュメモリを使った記録媒体)を搭載した高性能パソコンがどの程度生産されて売れるかです。新型コロナウイルスによって世界のハイテク経済における優先順位が変化しました。新型コロナウイルス以前はハイテク経済上の最優先課題は、5Gスマホを出来るだけ作って売ることでした。しかし、新型コロナウイルス禍の中では、在宅勤務のために会社の情報システムに接続して十分使える高性能パソコンを、可能な限り作って売ることが最優先課題となっています。同時に、小学生から大学生までの在宅学習に使うパソコンにも大きな需要が期待できます。
5Gは2番目の課題ですが、使い方も変化する可能性があります。5Gを使って動画やゲームを楽しむのは2番目の目的で、5G回線を使って会社や学校の情報システムと自宅のパソコンを高速接続することが当面の目的となる可能性があります。
後述するように、台湾の世界最大の半導体受託製造メーカー、TSMCの2020年12月期1Q決算(2020年1-3月期)の売上高は前年比42.0%増の大幅増収となりました。5Gスマホ向けの7ナノCPUだけでなく、データセンター向けサーバー用の高性能CPUやパソコン向け7ナノCPU(AMDがTSMCに生産委託している)も増えたもようです。
今後の問題は4月以降高性能パソコンと5Gスマホが順調に生産されて売れるかです。私は、在宅勤務と在宅学習で使う高性能パソコンの需要が全世界的に発生しており、5Gはまず仕事用、学習用の高速回線として使われる可能性があるため、高性能パソコンと5Gスマホが今春以降好調に売れる可能性は高いと考えています。ただし、生産体制が整うかどうか、注視する必要があります。
表1 世界半導体出荷金額(単月)
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単位:100万ドル、%
出所:WSTSより楽天証券作成。
グラフ1 世界半導体出荷金額(3カ月移動平均)
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単位:1,000ドル
注:2,015年3月から「アジア太平洋・その他」から「中国」を分離
出所:SIA(米国半導体工業会)より楽天証券作成
2.メモリ市況は堅調な動きが続く
NAND型フラッシュメモリとDRAMの大口価格は堅調な動きが続いています。NAND型フラッシュメモリの大口価格は3月下旬に一旦上昇に転じてから横ばいの状況が続いています。DRAMの大口価格は2月上旬に上昇に転じた後緩やかな上昇が続いています。
今後を展望すると、NANDについては、5Gスマホの生産増加だけでなく、データセンター需要、パソコン需要(HDDからSSDへの転換)の3分野が重要になってくると予想されます。DRAMについてもこの3分野の伸びが期待できます。
足元では中国での電子機器全般の生産が、急速に回復はしていると思われるものの、まだ十分ではないもようです。特にパソコン生産が需要の拡大に対して十分追いついていないことが、NAND、DRAMの大口価格の上昇が鈍いこと、DRAMのスポット価格がやや軟化していることに結びついていると思われます。
ただし、5Gスマホ、データセンター向け高性能サーバー、高性能パソコンの各分野の生産は着実に増えると予想されるため、NAND、DRAMの大口価格は今後も堅調に推移すると予想されます。
グラフ2 NAND型フラッシュメモリの市況(2017年5月29日から)
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単位:ドル、国内大口需要家渡し、TLC(注:2017年5月30日付で従来の多値品がTLCに変更された)
出所:日経産業新聞主要相場欄より楽天証券作成
グラフ3 DRAMの市況
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単位:ドル、国内大口需要家渡し、4ギガビット(2018年6月26日までDDR3、それ以降はDDR4)
出所:日経産業新聞主要相場欄より楽天証券作成
グラフ4 DRAMのスポット市況
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単位:ドル、小口渡し、現金
出所:日本経済新聞主要相場欄より楽天証券作成
注:2018年6月29日までは4ギガビットDDR3型、それ以降は同DDR4型
3.2021年3月期の半導体設備投資は上方修正含みか
2020年3月の日本製半導体製造装置販売高は、1,972億6,800万円(前年比4.8%増、前月比14.4%増)となりました。特に中国において、いくつかの半導体製造装置メーカーと半導体工場の間で、新型コロナウイルスの影響により人員が確保できず、装置の設置が進まなかったことが、3月の前年比が一ケタの伸びに止まった背景と思われます。
ただし、先行している北米製半導体製造装置は、2020年3月は前年比20.1%増となりました。順調な動きが続いています。
半導体設備投資は2020年暦年、2021年3月期ともに順調に伸びると思われます。TSMCの2020年1-3月期の設備投資は2019年10-12月期比15.1%増の63.9億ドルになり、一段と増加しました。5Gスマホ向けの7ナノCPUとチップセット増産投資、5ナノCPUとチップセット新設投資が継続中と思われますが、2020年以降は5Gスマホ向けだけでなく、パソコン向けCPUの増産投資も活発になると予想されます。TSMCの2020年設備投資の当初予想は150~160億ドルでしたが(2019年12月期は149億ドル)、楽天証券では2020年12月期は200億ドル以上になる可能性があると考えています。
パソコン用CPU最大手のインテルの設備投資も継続的に増えると思われます。
NAND、DRAMも時期は異なると思われますが、設備投資増加が期待されます。その結果、2020年暦年と2021年3月期の半導体設備投資は、2020年夏ごろまではコロナウイルスの影響があるものの、年間では当初予想されていたものよりも増加する可能性があります。引き続き動きを注視したいと思います。
表2 日本製、北米製半導体製造装置の販売高(3カ月移動平均)
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単位:日本製は百万円、北米製は百万ドル、%
出所:日本半導体製造装置協会、SEMIより楽天証券作成
グラフ5 TSMCの四半期設備投資
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単位:億米ドル
出所:会社資料より楽天証券作成
グラフ6 TSMCの年間設備投資額
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単位:億米ドル
出所:会社資料より楽天証券作成
4.TSMCの2020年12月期1Q業績
2020年4月16日、台湾のTSMCが2020年12月期1Q(2020年1-3月期)決算を発表しました。好業績でした。
今1Qは売上高3,106億台湾ドル(93.2億米ドル、1台湾ドル=0.03ドル)(前年比42.0%増)、営業利益1,285.2億台湾ドル(同2.0倍)となりました。前1Qはスマホ向けの落ち込みが響きましたが、今1Qは春商戦以降の5Gスマホの好調を当て込んだ発注が増加したと思われます。
テクノロジー別に見ると、7ナノの売上高が順調に増えています。5Gスマホ向けだけでなく、高性能パソコン、高性能サーバー向けに増加したと思われます。
営業利益率は、前1Q29.4%、前4Q39.2%から今1Qは41.1%になりました。前述のように設備投資が活発でしたが、大幅増収でコストを吸収し営業利益率は向上しました。
TSMCの2020年12月期2Q(2020年4-6月期)のガイダンスから計算した今2Qの業績予想は、売上高3,030~3,120億台湾ドル(前年比25.7~29.5%増)、営業利益1,182~1,279億台湾ドル(同54.9~67.6%増)です。今1Q実績と今2Qガイダンスから2020年12月期を予想してみました。楽天証券予想では、2020年12月期は29.0%増収、50.3%営業増益となります。今期も好業績が続きそうです。
今期予想PERは14.8倍となります。業績好調と最先端の半導体製造技術を持っていることを考えると中長期投資に向いた銘柄と言えそうです。
表3 TSMCの業績
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株価 295.5台湾ドル(2020年4月23日)
時価総額 76,623億台湾ドル(2020年4月23日)
発行済株数 25,930百万株
単位:億台湾ドル(1台湾ドル=3.57円、0.03ドル)、台湾ドル、%、倍
出所:会社資料より楽天証券作成。
注1:発行済株数は完全希薄化後。
注2:TSMCは台湾市場、ニューヨーク市場の両方に株式を上場しているが、ここでは台湾市場の株価を記載した。
グラフ7 TSMCの月次売上高:前年比
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単位:%
出所:会社資料より楽天証券作成
グラフ8 TSMCのテクノロジー別売上高
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単位:億台湾ドル
出所:会社資料より楽天証券計算
5.セラミックコンデンサも2020年1-3月期は国内生産が高水準
電子部品も、代表的な電子部品で様々な電子機器に多用されるセラミックコンデンサの国内生産を見ると、2020年1-3月期はかなり高い生産水準でした。経済産業省生産動態統計によれば、セラミックコンデンサの生産数量の前年比は、2019年12月6.2%減、2020年1月24.5%増、2020年2月31.9%増でした。同じく生産金額の前年比は、2019年12月5.2%増、2020年1月7.5%増、2020年2月13.4%増でした。単価が民生用向けに低下していると思われるため、生産数量の伸びほどは生産金額は伸びていませんが、2月は10%以上の伸びになりました。
セラミックコンデンサの中でも主力製品であるチップ積層セラミックコンデンサ(MLCC)は、村田製作所が世界シェアの約40%を占めています。村田製作所の2020年3月期4Qは、MLCCの普及品を生産している中国工場の稼働率が低かったことがマイナス要因ですが、生産量の大半を占めるMLCC国内工場の稼働率が高かったと思われることはプラス要因です。
セラミックコンデンサの2020年1、2月の国内生産も、TSMCの売上高同様、スマートフォン向け中心に増えたと思われます。今後の問題は、これまで述べたように、春以降5Gスマホとパソコンがどの程度売れるかです。村田製作所、TDK、太陽誘電などMLCCを生産している電子部品メーカーの2020年3月期決算に注目したいと思います。
グラフ9 セラミックコンデンサ生産数量:前年比
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単位:%
出所:経済産業省生産動態統計より楽天証券作成
グラフ10 セラミックコンデンサ生産金額:前年比
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単位:%
出所:経済産業省生産動態統計より楽天証券作成
グラフ11 セラミックコンデンサ:生産単価
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単位:円/個
出所:経済産業省生産動態統計より楽天証券作成
6.2021年3月期も半導体と電子部品に注目したい
以下は、半導体、電子部品の各セクターの決算発表予定です。引き続き両セクターに注目したいと思います。
半導体、電子部品関連主要企業の2020年3月期決算発表予定
4月23日(木) ディスコ
4月24日(金) アドバンテスト
4月28日(火) 信越化学工業、レーザーテック(2020年6月期3Q)
4月30日(木) 村田製作所
4月30日(木) 東京エレクトロン、日本電産
5月8日 (金) SUMCO(2020年12月期1Q)、HOYA
5月11日(月) ステラケミファ
5月12日(火) SCREENホールディングス、太陽誘電
5月13日(水) ソニー
5月15日(金) TDK
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April 24, 2020 at 01:25PM
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