電子部品メーカーが需要構造の変化に直面している。大手9社の2023年4―9月期連結決算は8社が当期減益となった。中華系スマートフォンの販売は回復しつつあるが、新興国向けのローエンド機種がけん引役となった結果、積層セラミックコンデンサー(MLCC)などの部品需要は先端品を中心に力強さを欠く。電気自動車(EV)向けでも中国EVメーカーの値下げ圧力が厳しく、利益を確保しにくい状況だ。
23年4―9月期の電子部品メーカーの業績について、大和証券の佐渡拓実チーフアナリストは「(為替の)円安の再加速による押し上げ効果を回復力の弱さが打ち消す構図は変わらない」と指摘。「スマホ向けは客先在庫の調整が終了し改善基調ながら、ピーク水準には程遠い」とする。
村田製作所の中島規巨社長は「台数ベースでの底はすでに脱していると思う」と語る。直近の約1年間にわたって電子部品各社の業績の重しだった中華系スマホメーカーの在庫調整が終了したとの見方を示した上で「期初想定に比べ、ミドル・ローエンド端末の比率が若干上昇している」と付け加えた。
スマホ買い替え周期の長期化に景気減速も加わって中国スマホ市場が頭打ちの中、中華系スマホメーカーを支えるのはインドなど新興国での販売増だ。こうした地域で売れるのは価格の低いミドルやローエンド端末が中心。ハイエンド品の販売は伸び悩んでおり、ハイエンド端末向けの部品に強い太陽誘電の業績に影響しているとみられる。
中国EVメーカーによる電子部品への値下げ圧力は強い(イメージ=ブルームバーグ)一方、4―6月に客先の部品在庫の取り崩しが見られた自動車向けは「夏ごろから生産台数にリンクした部品出荷に回復した」(大和証券の佐渡チーフアナリスト)が、中国EVメーカーによる値下げ圧力が強い。ニデックの永守重信会長兼最高経営責任者(CEO)は、中国を主な市場とするEV向け駆動装置のイーアクスルが24年3月期は「150億円の営業赤字になる」と説明。車載用MLCCも「先進運転支援システム(ADAS)やパワートレーン(駆動装置)向けも含め価格の変動がある」(村田製作所の大森長門常務執行役員)。 スマホ、自動車ともこうした状況は一過性との見方もあるが、汎用データセンター(DC)など他分野の需要回復も遅れる中でどう収益性を高めるか、電子部品各社の手腕が問われる局面に入った。ニデックはイーアクスルについて今後は欧米市場も取り込み、収益力の強化を図る。TDKはハードディスクドライブ(HDD)ヘッドの24年1―3月期の損益を水面上に引き上げるため数量増や「コスト改善の追加措置を検討中」(山西哲司代表取締役専務執行役員)だ。
イビデンは河間事業場(岐阜県大垣市)で建設中のDC向け汎用サーバー用ICパッケージの新工場棟の稼働時期を当初計画の24年中から26年度に延期した。一方、人工知能(AI)サーバー向けは引き続き好調なことを受け、生成AI用の生産を予定する新工場の大野事業場(岐阜県大野町)は計画通り25年度の稼働を見込む。
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