自動車業界全体の国際競争力を底上げするため、高効率な開発手法を中小部品サプライヤーに広める動きが出ている。自動車メーカーなどが運営する組織「MBD推進センター」は、コンピューター上のモデルを軸に開発を行う手法「モデルベース開発(MBD)」の活用を広めるため、地域の産業振興団体との連携を拡大。車両開発が高度化する中、国内自動車産業の生き残りをかけ、開発プロセスの革新を目指す。(増田晴香)
カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)やCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)など自動車に新たに求められるニーズに迅速に対応するため、開発効率の向上は喫緊の課題だ。紙の仕様書の代わりにシミュレーションモデルを用いるMBDは、マツダが業界に先駆けて導入し、トヨタ自動車、ホンダなども本格活用している。
自動車メーカーや大手サプライヤーにとっては導入必須になりつつあるMBDだが、将来的にはサプライチェーン(供給網)全体の開発最適化を見据え、中堅・中小サプライヤーへの同手法の浸透も促す。
12日、MBD推進センターは群馬県産業支援機構が県内で開催した自動車部品サプライヤー向け「デジタル技術活用講座」に登壇。自動車開発の現状と課題やMBD・コンピューター利用解析(CAE)導入により見込まれる効果、中小企業への普及施策などを紹介した。
プレゼンテーションした同センターの青木剛中小連携WGリーダー(ホンダ電動事業開発本部エキスパートエンジニア)は「全国の中小企業に成功事例を展開し、産業全体の効率向上につなげたい」と強調した。群馬県産業支援機構のほか、すでに6地域の産業振興団体などが同センターに加入し、中小企業への普及に向け連携している。
講座に参加したサプライヤーの技術担当者は「将来アプローチできるよう準備したい」と話した。今回、群馬では全国初のCAE技術相談会も開いた。
MBDを導入すれば中小・大手サプライヤーの部品の設計開発から、自動車メーカーの車両・システム開発までを一貫してモデルでやりとりし、開発の初期段階からデジタルですり合わせることができる。実機テストの回数や試作品の数を削減でき、低コストで手戻りの少ない高効率な開発が可能。次世代のモノづくりにも対応でき、競争力の強化につなげる狙いだ。
同センターは2021年に設立し、現在は国内自動車メーカーをはじめ部品メーカー、ソフトウエア企業など148社・団体が会員となっている。これまで、サプライチェーン間や産学間で高度なすり合わせを実現するためのガイドライン構築活動や、共通課題の解決などに取り組んできた。23年4月に一般社団法人化し、今後は普及活動などを拡大する方針だ。
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