昨年10月に打ち上げに失敗した小型ロケット「イプシロン」6号機について、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は18日、2段機体の姿勢を制御するガスジェット装置の燃料タンクのゴム膜が、組み立て時に別の部品に挟まれてちぎれ、燃料の配管をふさいだことが原因と明らかにした。文部科学省の有識者会合で検証結果を報告した。
ゴム膜はダイヤフラムと呼ばれ、タンク内の燃料と加圧用ガスを隔てるもの。組み立ての際、球形のタンクの外周の部品と、ダイヤフラムを固定する部品の隙間にダイヤフラムが挟み込まれた。2つの部品を溶接したことで、挟み込まれた部分が圧縮され、ちぎれた。実際の飛行で、ガスジェットの始動のため燃料の弁が開かれた際、この破片が吸い込まれる形となって、配管に詰まってしまった。
JAXAによると、挟み込みは製造上のばらつきで生じる設計だった。開発時、挟み込みを検出できる規格にしておらず、実際に検出できずに検査に合格してしまった。タンクは1990年代に開発され、ダイヤフラムの設計変更を経て、旧文部省宇宙科学研究所(現JAXA宇宙研)の衛星に使われてきた。過去の衛星で挟み込みが生じていたかどうかは「飛んでしまったものなので分からない(検証できない)」という。
6号機は現行イプシロンの最終機として、宇宙空間で実証する民間企業の部品や機器を搭載した小型衛星、学校や研究所の超小型衛星、民間のレーダー衛星の計8基を搭載し昨年10月12日、内之浦宇宙空間観測所(鹿児島県肝付町)から打ち上げられた。第2段と第3段の分離前に機体姿勢の異常が判明したため、打ち上げ6分28秒後に地上から信号を送って破壊した。
後継機の「イプシロンS」では、この燃料タンクに対策を施すか、現行の大型ロケット「H2A」と同型のものを採用するか、今後検討する。イプシロンSの初号機は、NECが開発を受注したベトナムの衛星を搭載する。今年度にも打ち上げる計画だったが、JAXAによると今回の失敗とは無関係に、衛星側の理由で来年度になる見込み。
文科省会合後、JAXAイプシロンロケットプロジェクトチームの井元隆行プロジェクトマネージャは報道陣に「打ち上げ失敗に、非常に重い責任を感じる。イプシロンSをしっかり開発し成功させる。それに向けてやれることは全てやり、直接の原因の対策を反映するのはもちろん、背後の要因も検証して信頼性の高いロケットにする」と述べた。
政府の基幹ロケットではイプシロン6号機に続き今年3月、大型ロケット「H3」1号機も失敗している。
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