【ニューヨーク=竹内弘文】JPモルガン・チェースなど、商業銀行部門が中心の米銀大手4行は13日に2022年12月期決算を発表した。米景気後退入りに備えて各行とも貸倒引当金を積み増し、与信費用を2期ぶりに計上した。個人向けローンでは焦げ付きが徐々に増えており、経営トップからは景気の先行きを警戒する声があがる。
「 穏やかな景気後退入りが当社の基本シナリオだ」(バンク・オブ・アメリカのブライアン・モイニハンCEO=最高経営責任者)、「深刻な景気後退までは行かなくとも、後退には備える必要がある」(ウェルズ・ファーゴのチャールズ・シャーフCEO)。決算発表後に各行が開いた経営説明会の場で経営トップは口々に米経済失速へ懸念を表明した。
決算内容からも警戒感が透ける。融資先の財務が悪化する可能性に備える貸倒引当金に、実際に回収が困難になった債権の貸倒損失を足した与信費用の計上額は、22年12月期に4行合計で157億ドル(約2兆円)となった。米連邦準備理事会(FRB)の積極的な金融引き締めを背景に、企業の景況感が急速に悪化している現状を反映した。
景気に過熱感のあった21年12月期には貸倒引当金の戻り益217億ドルが出ており、与信費用の計上は2期ぶり。4行がそろって最終減益に陥る要因となった。与信費用の計上額は四半期ごとに増えており、23年12月期には新型コロナウイルス禍前の19年12月期(202億ドル)の水準を上回る可能性もある。
堅調な個人消費を背景に各行が発行するクレジットカードの利用は増加傾向にある。JPモルガンやシティグループが発行したカード決済額は22年10~12月期に前年同期比1割増えた。JPモルガンは「リボルビング払い」の残高も2割増え、コロナ禍前の水準を回復した。
コロナ対策の給付金による家計の蓄えは旺盛な消費で減ってきており、景気悪化も相まって、消費者向け融資の延滞リスクは徐々に高まっている。JPモルガンやシティは23年末までにカード利用者向けの貸倒損失がコロナ禍前の水準に戻ると予想する。
金利上昇の余波で、住宅ローンや自動車ローンの需要は急速に鈍った。バンカメでは10~12月期の住宅ローンの新規組成が前年同期比8割減った。ウェルズ・ファーゴの自動車ローン組成も半減した。
FRBによる急ピッチの利上げは銀行の貸出金利の上昇をもたらし、利ざや拡大を通じて銀行の収益押し上げに寄与している。22年10~12月期に限れば、純金利収入の増加によりJPモルガンやバンカメは最終増益を確保できた。
問題は、与信費用の増大を吸収する利ざや拡大の追い風が近くやみそうなことだ。JPモルガンは23年通年の純金利収入(市場運用除くベース)が740億ドルになると予想しており、22年10~12月期実績の年率換算より6%少ない水準だ。預金金利も上昇し、調達コストが高まる。
JPモルガンのジェイミー・ダイモンCEOは決算説明の場で「740億ドルという目標は保守的な見積もりではない」と述べ、達成は容易ではないと強調した。国債などで運用するMMF(マネー・マーケット・ファンド)などの低リスク運用商品や他行との間で利回り競争は激しく、低金利の預金を前提にした商業銀ビジネスは転機にさしかかっている。
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