日本の賃金は、OECDの中で最下位グループにある。アメリカの約半分で、韓国より低い。同様の傾向がビッグマック指数でも見られる。 ところが、アベノミクス以前、日本の賃金は世界第5位だった。その後、日本で技術革新が進まず、実質賃金が上がらなかった。そして円安になったために、現在のような事態になったのだ。円安で賃金の購買力を低下させ、それによって株価を引き上げたことが、アベノミクスの本質だ。 昨今の経済現象を鮮やかに斬り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。野口悠紀雄氏による連載第53回。
■日本の賃金はアメリカの約半分で、韓国より低い OECDが加盟諸国の年間平均賃金額のデータを公表している。 2020年について実際のデータを見ると、つぎのとおりだ。 日本は3万8515ドルだ。他方でアメリカは6万9391ドル。したがって、日本の賃金はアメリカの55.5%でしかない。 ヨーロッパ諸国を見ると、ドイツが5万3745ドル、フランスが4万5581ドル、イギリスが4万7147ドルだ。 韓国の賃金は4万1960ドルであり、日本の値はこれよりも低い。
2020年において日本より賃金が低い国は、旧社会主義国と、ギリシャ、イタリア、スペイン、メキシコ、チリぐらいしかない。 日本は、賃金水準で、いまやOECDの中で最下位グループに入っていることがわかる。 だから、日本人は、日本で得た賃金を外国で使っても、あまり大したものが買えない。 こうした状況に対処しようと思えば、アメリカや英独仏、あるいは韓国などに出稼ぎに行き、日本より高い賃金を得ることだ。日本人が老後生活を送るためには、海外出稼ぎを真剣に考えなければならない時代になってきた。
「ビッグマック指数」というものが算出されている。これは、イギリスのエコノミスト誌が公表しているデータで、各国のビッグマックの価格を比較したものだ。 2021年のデータを見ると、つぎのとおりだ。 日本のビックマックは390円で、これを為替レートで換算すると3.55ドルになる。 他方で、アメリカのビックマックは5.65ドルである。したがって、日本のビックマックはその62.8%ということになる。 上で見たように、OECDの数字では、日本の賃金はアメリカの賃金の55.5%だった。ビッグマックの価格の違いも、賃金格差のデータとほぼ同じだ。
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