川崎フロンターレ(F)が突っ走ってるね。でも悲しいことに、日本中にそれを知っている人は何割いるのだろう。サッカーに興味のない人で、川崎Fの選手名が分かる人はいるのだろうか。サッカーファンでも、3人以上の選手名がすらすら言える人はそういないかもしれない。

全盛期の巨人なら、野球に興味がない人でも王、長嶋は当然知っているし、他の選手名も知っていた。一時期、サッカーもそういう時代があって、全盛期のヴェルディ(川崎V)は、カズ、ラモス以外にも武田や北沢ら名前が知られていた選手が何人もいたし、ジーコやアルシンドら、実際プレーは見てない人でも名前を認識していた。

巨人が9連覇した時代には、他の球団が「巨人に追いつけ、追い越せ」でプロ野球全体が盛り上がった。当時の巨人では、他球団とは別格の高額年俸選手が多かった。しかし今の川崎Fに1億円プレーヤーの日本人はほとんどいない。だから「頑張ればフロンターレが引っ張ってくれる」と思う選手は多くないだろう。今の川崎Fの強さは、当時の巨人に近いものがあっても「フロンターレに追いつけ、追い越せ」とは、まだなっていない。

決してスーパースターぞろいでなく、高額年俸選手が特別多くはない川崎Fは、なぜここまで独走を続けるのか。FW、ボランチ、センターバックの縦ラインの軸に外国人選手がしっかり役割を果たす。しかも来日遅れの選手がいない。ブラジルからの新戦力がようやく合流した鹿島などとは対照的だ。

5人交代ルールもプラスだ。攻撃のカードをどんどん切ることができる戦力がある。変則ルールを最も有効活用している。新型コロナウイルスの影響でACL開始が遅れていることもプラス。始まる前に勝ち点を荒稼ぎしたことも、1シーズン全体の戦い方に余裕をもたらしたね。

Jでは安定した戦力を誇る川崎Fだが、5月末から始まるA代表、五輪代表には何人呼ばれるだろうか。五輪代表ボランチの田中くらいがレギュラーで、MF三笘とFW旗手は当落線上。A代表に呼ばれそうな選手はいないね。

ACLは6、7月に1次リーグが行われる予定。Jリーグでは無敵の川崎Fが、アジアのサッカーもリードできるのかな。楽しみな戦力がそろっているし、目立ったけが人もいない。今季の川崎Fがアジア王者にならないと、Jリーグのレベルが疑われるね。「井の中の蛙(かわず)」なら、Jリーグへの興味は大きく後退するだろう。

コロナが深刻化するほど、人々はサッカーに目を向ける余裕がなくなった。サッカー離れの時代だね。これは世界的な流れ。だから欧州ではスーパーリーグ構想が持ち上がった。ブラジルでストリートサッカーを興じる子供を見かけなくなった。この流れは日本も避けられない。止めたり、少しでも遅らせることは難しい。しいて言うなら、川崎FがACLを勝って、Jリーグを応援するサポーターのプライドを高めることだろうな。(日刊スポーツ評論家)