新型コロナの感染拡大を受け、独自の緊急事態宣言が出されている山形市では27日から、酒類を提供する飲食店などに対する時短営業の要請がスタートする。時短に取り組む飲食店には県と市の協力金80万円が支給される一方、飲食店に酒や食材を納入する周辺業者には時短に伴う補償がなく、支援を求める声が聞かれる。 山形小売酒販組合理事長で茂木酒店(同市)を営む茂木賢一店主は「3月に入り感染が落ち着き、やっと希望の光が見えたと思ったら感染者が一気に増えた。時短営業でまた飲食店から人がいなくなる」と肩を落とす。昨年来のコロナ禍で飲食店への客足は戻らず、業務用酒を卸す酒販店は売り上げが激減。茂木店主は「一般客がスーパーやドラッグストアに流れ、小さい酒販店は飲食店(の業務用)頼みの店が多い。時短営業で酒消費量が減れば大きな痛手だ」と語る。 悩まし、在庫調整 40~50軒に酒や中華料理の食材を卸す「はま田屋」(同)の浜田宏実社長は「時短要請により、さらに人が動かなくなる。もう何ともならない」と悲鳴を上げる。家飲み需要も伸び悩み、頭痛の種はビールや酒の在庫量だ。倉庫には現在ピーク時の3分の1の在庫しかないが、「この1年は客の動きが出ては止まりの繰り返し。在庫を増やせば余り、減らせば足りない。支払いを考えると多過ぎてはだめで、客足が戻った時のことを考えると少な過ぎてもだめ。調整が難しい」。酒蔵や酒米農家への影響も懸念する。 鮮魚卸など総合食品流通業の山形丸魚(同)の担当者は「飲食店から仲卸業者に食材のキャンセルが出た。来週以降の動向は読めないが、大きなダメージだ」とする。3月上旬にはノドグロやヒラメなど高級魚の注文が増え、週末には宴会用食材の予約も入り始めていたといい「期待感があった矢先での緊急事態宣言、時短要請で落胆はかなり大きい」とする。
家族を守らないと マルコ製氷(同)は市内外の飲食店や居酒屋に氷を納品しているが、斎藤君(きみ)専務理事は「売り上げは昨年初めに比べ約4割減。飲食店の時短営業が始まればさらに落ち込むだろう」と見通す。各店の意向や営業方針の確認を進めている最中だが「どう工夫して対応するかが難しい」。昨年1年はイベント中止が相次ぎ、かき氷向けの氷需要も伸び悩んだ。「行政には何らかの支援を希望したい。私たちは社員を、社員は家族を守らなければならない」と切実な思いを語った。 一方で、状況打開への決意を新たにする人も。食材を卸す会社の男性社長は「営業に制限を加えられた店の心情を考えると、沈んでばかりもいられない」と語る。宣言解除後も客足が戻る保証はないが、「時々の状況に応じ対処するしかない。少しでも明るい兆しを見つけて何とか状況を打開したい」と語った。 県に「支援の充実」緊急要望、喫茶飲食同業組合 山形市内で時短営業が始まるのを前に、県喫茶飲食生活衛生同業組合(佐藤文昭理事長)は26日、県に対し、支援の充実を求める緊急要望を行った。 要望では、緊急事態宣言直後から山形市に限らず県内全域で飲食を控えるなどの影響が出始めていると強調。他地域でも協力金制度を実施するよう求め、飲食店の取引関係業者向けのプレミアム付き商品券の発行などを要請した。県庁を訪れた佐藤理事長は「他地域でも不安の声が上がっており、支援をお願いしたい」と述べ、対応した木村和浩県産業労働部長は「影響を十分踏まえ、どんな支援ができるかしっかり検討したい」と語った。 佐藤理事長は時短営業について「居酒屋などは午後9時までは客が入ると思うが、営業時間の遅いスナックやバーは営業することができない」と課題を指摘した。
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