中学校時代に見たサッカーのテレビ中継で、解説者が「ビルマ(現ミャンマー)は伝統的に技術レベルが高い」と言っていたのが今でも印象に残っている。
ミャンマーは日本サッカーにとって恩義がある国だ。大正時代、当時のビルマからチョー・ディンという若者が来日。後の東京工業大学である東京高等工業学校で学びながら、各地でサッカー指導を行った。
彼はショートパス主体の戦術を教え込んだ。日本サッカーは格段に強くなり、ベルリン五輪での強豪スウェーデン戦の勝利や準々決勝進出につながった。現在の男女の代表チームが得意とするパスサッカーは、ビルマ人留学生の指導が原点の一つだったのだ。
当時のビルマは英国領インドの一部で、彼はスコットランドの人からサッカー技術を習ったとされる。スコットランドは伝統的にショートパス戦法だ。英国から東南アジア、日本へとサッカー技術が流れるパスのように伝承された形で感慨深い。チョー・ディンは一九二四年に帰国したが消息は不明だ。
今月予定されていた日本対ミャンマーのW杯予選はコロナ禍で延期になった。そもそも政情不安でサッカーどころではない。
ミャンマー情勢は緊迫の度を増している。軍の弾圧に強い憤りを感じつつ、古いサッカーファンとして、恩人がどのような人生を送ったのか思いをはせた。(富田光)
関連キーワード
からの記事と詳細 ( パスサッカーの原点 - 東京新聞 )
https://ift.tt/2Og9GcV
No comments:
Post a Comment