新型コロナウイルスの影響で人の動きが止まり、世界の航空業界の苦境が続いている。各国が観光や経済活動を徐々に再開し始めているが、旅客数が戻るには時間がかかりそうだ。航空機自体の需要も減り、愛知県などに集積する日本の航空部品メーカーも打撃を受けている。
拡大するベルリンの空港にとめられたルフトハンザ航空の飛行機=ロイター
独ルフトハンザ航空は今月15日から航空便を現在の週約500便から約900便に増やす。声明で「観光とビジネス客のアクセスを増やす」と意気込んだ。
英航空情報会社OAGによると、欧米などで人の移動制限の解除が進むなか、6月に入り世界で約60の航空会社が運航を再開した。だが、全体の便数は前年同期に比べて65%減の状態。国際航空運送協会(IATA)は、国際線の需要が2019年水準まで回復するのは24年になると予想している。
各社は生き残りへ必死だ。ルフトハンザは5月末にドイツ政府が株の20%を握る代わりに、総額90億ユーロ(約1兆800億円)の公的支援を受ける救援策に合意した。手元資金が1時間に100万ユーロ(約1億2千万円)減る状態だったという。難局を政府の借り入れ保証や出資でしのぐケースは、フランスやイタリアでも起きている。
米航空大手も、政府から雇用維持を条件に給与補助など計500億ドル(約5・4兆円)にのぼる金融支援を受けた。だが、長期的なビジネス縮小は避けられず、相次ぎ大規模な人員削減に追い込まれている。
拡大する米ニューヨークのJFK空港=江渕崇撮影
すでに4万人が無給で休んでいるデルタ航空は、早期退職を募る方針。運航を一部再開しても、4~6月期の運航は通常の2割に満たない見込みだ。アメリカン航空やユナイテッド航空も管理部門の人員を約3割減らす考えだ。
国を代表する航空会社にばかり支援が集まる状況には疑問の声もある。欧州の格安航空会社(LCC)大手「ライアンエア」のオライリーCEOは、ライバルのルフトハンザなどを「まるで補助金中毒」と批判し、各国政府に平等な支援を訴える。
一方、豪州やタイでは政府支援を得られなかった航空会社が破綻(はたん)するケースも出てきている。4月には豪州2位のヴァージン・オーストラリアが経営破綻。5月19日にはタイ国際航空が会社更生法を申請した。
ANAホールディングスは、従業員約4万人規模の一時帰休を実施。政府系金融などから必要な際に借り入れられる枠を増やして資金不足に備えている。(和気真也、ワシントン=江渕崇)
拡大する組み立て中のボーイング737MAX=2019年、米ワシントン州、江渕崇撮影
航空会社の不振は、航空機メーカーにも波及している。米ボーイングは5月27日、米国内で6770人のレイオフ(一時解雇)に着手すると発表。中型機「787」の生産を半減させ、大型機「777」も3割減らす。カルフーンCEOは「我々の産業はいずれ復活するが、わずか2カ月前の水準に戻るまで何年もかかるだろう」と述べた。
ボーイングの取引先は約1万7千社。エンジンを手がける米ゼネラル・エレクトリック(GE)も、航空部門の1万3千人削減に追い込まれた。
日本への影響も大きい。
「787」は部品の35%が日…
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June 03, 2020 at 11:21AM
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