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10月1日に消費税が8%から10%に引き上げられる。食品などを対象にした軽減税率の導入や、キャッシュレス決済時のポイント還元など、小売店や飲食店はこれまでの増税時とは異なる対応が求められる。奔走する現場を追った。
■税率異なる「みりん」と「料理酒」
東京・品川のローソンの店舗。9月30日午後から店頭で値札を貼り替える作業が進んだ。ローソンでは軽減税率対象品の値札の値段の左側に「軽」の表示がある。酒税法上の酒類に分類されている「みりん」は軽減税率対象外で税率は10%。その隣には、塩が加えられて酒類の分類から外れた軽減税率対象の「料理酒」が並んでいた。
■軽減対象外の化粧品「5割近く販売増」
ドラッグストア大手のココカラファインでは29日までの1週間の売り上げが前週比4割伸びた。軽減税率の対象ではない化粧品関連が5割近く増え、消耗品を買いだめする人が多かったようだ。大森店(東京・大田)でティッシュペーパーなどを購入した50代の男性は「何が8%で何が10%なのか制度自体分かりにくいが、紙類は10%になると聞いてひとまず来た」と話した。同店では「25日ごろから来店がぐっと増えた。前年比3倍の日もあった」(田名部平店長)という。
■有機ELテレビ、9月は前年比4倍売れる
9月30日のビックカメラ有楽町店(東京・千代田)では午前中から大型家電売り場を中心に製品を見て回る来店客の姿が目立った。「月曜午前は通常お客様が少ないが、朝から相談カウンターを目指して来る方が多かった」(同店)という。9月1日から29日までで、有機ELテレビの販売は前年同期比4倍、冷蔵庫・洗濯機・エアコンが約2倍で推移するなど、駆け込み消費が目立った。
■定期券「お得な8%のうちに」
JR新宿駅南口のみどりの窓口では、10月以降の定期券を購入する人などで長蛇の列ができた。定期券は9月30日までに購入すれば、10月以降も8%の価格で乗れる。通学定期を購入した18歳女性は、「ちょうど定期が切れるタイミングだったし、8%で買えた方がお得なので今日のうちに更新した」と話した。
一方で5年前の増税時と比べると、混雑は少ないという。JR東日本では「利用開始の14日前から定期券を買えることを周知するなど、早めの購入を呼びかけたため購入日が分散したようだ」とみる。
■ペットフードは税率10%、知らない人も?
東京・板橋の低価格ストアのビッグ・エー板橋大山店ではペットフードの9月の売れ行きが想定だけでなく前年実績も下回った。三浦弘社長は「ペットフードが税率が10%になることを知らない消費者もいたかもしれない」と話していた。
通常は24時間営業の同店だが、値札の入れ替えやレジシステムの動作確認のため30日午後10時から10月1日午前9時まで臨時休業する。
■値札交換「明日朝までに間に合うだろうか」
東京・葛飾の青戸銀座でアパレル店「ファミリーファッションタニグチ」を営む谷口信雄さんは、「30日の朝から値札の交換を始めた」。これまでは税込価格を表示していたが、増税を契機に税別表記に切り替えるという。店内には約1000点の商品が並び、営業時間の合間に作業をしているが「明日朝までに間に合うだろうか」と心配していた。東京・荒川の川の手もとまち商店街で雑貨店「朝日屋商店」を経営する80代の女性は「値札の入れ替えがとにかく大変」と話す。今回の増税について「レジを入れ替えろとか、キャッシュレスを使えという売り込みが多くてうんざりした」とこぼしていた。
■指輪「117720円」→「119900円」
東京・中央の百貨店の松屋銀座店では30日夕方から税率が10%になる宝飾品や酒類の値札の入れ替えを始めた。指輪などでは作業を1~2人で担当。「30日中に作業が終わるようにして、翌日の営業に影響がないようにする」(同店)という。
■ガソリンスタンド「安いうちに満タン」
東京・世田谷のガソリンスタンド。給油にきた30代男性は「明日から高くなるので、安いうちに満タンで入れたい」と話す。この店の店長は「夕方にかけての客の伸びに期待している。ただ前回の増税時よりは車両が少ない」としている。
2019-09-30 10:04:00Z
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